2013年02月27日

うーん、、。



今日は朝から何故か 「ヤル気」 が出ない。



そう言えば、電車に乗っている時からなんだか憂鬱だった、、。




毎日時計をいじっていると、、、時折こんな日がある。



もっともどんな仕事でも、誰にでもそんな日はある筈だが、、、皆、己にムチ打ち、怠けずに頑張っているのだろう。




では 「怠け者」 の私はどうするか?



世に知れた 「巨匠」 であれば、こんな時は 「今日は気乗りがせん。 帰る。 後は任せたぞ!」 ということになるのかもしれない。



しかし小さな時計屋のオヤジがそんなことをしていたら、、、たちまち店は潰れてしまう。



だから 「難しい仕事」 を避ける。



一瞬の気も抜けないような厄介な仕事は 「調子がいい日」 に回し、、、ある程度 「長年の慣れ」 で解決する仕事に掛かる訳だ。




ちなみに、この 「慣れで解決する仕事」 というのは、必ずしも 「単純な時計」 を意味しない。



時計に馴染みのない読者のために説明を加えると、、、機械式時計には単に 「時刻を表示するだけの時計」 と、それ以外に様々な 「付加機能を持たせた時計」 がある。



全体的には前者が圧倒的多数だが、、、中には例えばストップウォッチ機能の追加された 「クロノグラフ」 や、鐘の音で時刻を知らせる 「リピーター」 というような 「複雑時計」 があるわけ。




当然 「単機能の時計」 は 「複雑機能付きの時計」 よりも単純な構造をしているから、、、整備も比較的簡単と言えるが、、、それぞれの時計の傷み方、壊れ方は千差万別。



単純な構造の時計だからと言ってナメて掛かると、予想外に手こずることもあるし、、、逆に複雑極まりない時計だからと覚悟して掛かったら状態良好・極めてスムーズに完了、などということもあるから、、、最終的には、「やってみるまで分らない」 もの。



残念ながら、この辺は 「まだまだ修行が足らない」 ということか、、。




幸いなことに、今日取り掛かった時計はスムーズに進行中。



施すべき処置は既に一通り完了し、、、後は 「組み立て・調整→閉店→赤提灯→帰宅」 を残すのみ(?)




しかし、そんな時に限って、完成後に 「まさかのゼンマイ切れ→分解し直し→居残り(涙)」 なんてことが有り得る。



これはもう、「今日はどうもやる気が、、」 などといった甘ったれた気持ちを天が見透かしたように、、、本当に最後の最後にやって来るのだ!

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2013年02月24日

「ムカつくムカつくムカつくー」




今朝国分寺駅で急行の通過待ちをしていたら、そんな風に叫びながら一人の男が列車に乗ってきた。




余程腹の立つことでもあったのか、、、本当に不快そうに顔をしかめている。




年の頃、30くらいの中肉中背。




黒のビジネススーツに身を包み、髪の毛はさっぱりと七三に分けているが、、、背中に背負った箱型のバッグが少しアンバランス。




ドア付近に立っている私の前を通過したその男はそのまま車両の半ばまで進み、、、吊革を掴んで 「ムカつくムカつく」 を連呼した。





乗客の反応は、まちまち。




驚いた様子で男の顔を見る者。




それとはなしに子供の手を曳き、列車から降りるお母さん。




「なんだこいつは?」 といった感じで男の顔を睨み付けるヤンキー系の兄ちゃん。



それから、、、男の存在すら目に入らぬ、といった感じで、完全に無視するビジネスマン風。



しかし、その男はそういった周囲の反応に構わず、、、 「ムカつくムカつく」 を繰り返した。




読んでいる皆さんは、こう思うかもしれない。



「何だ。よくある話しじゃないか」



そう。



特に珍しいことでもなんでもない。



実はそれが言いたかったのだ。




最近、間違いなく増えているような気がする。



「独り言」 を言っている人。



身なりはきちんとしていて、普通に勤めをしているように見える。



だが、そこには居ない 「誰か」 に向かって、、、何かを話し掛けている人。




もし 「増えている」 という私の想像が正しかったとすると、、、何が原因なのだろう?



職場や家庭でのストレスか、、、ゲームやインターネットのやり過ぎか、、、それとも 「脱法ドラッグ」 のような薬物の影響か?



もちろん 「独り言」 自体は犯罪でもなんでもない。



だが 「その場の現実とは別世界で行動している」 という意味では、、、「危険な行動に繋がる可能性」 を秘めていると思うのは考え過ぎか、、?




そう言えば 「乗客の反応」 に、一人入れ忘れた。



叫んでいる男を観察しながら、、、携帯電話でブログを打っている中年男。



それはまさに、第三者から見た 「私」 だ。



これもある意味 「別世界で行動している人間」 と言えるか?



男との唯一の違いは、、、 「声を出しているかいないか」 だけ。 




そんなことを考えているうち、「武蔵境〜武蔵境〜」 



今度は 「ふざけんじゃねェーよ!」 と叫び、、、男はホームに飛び出した。



そして階段の方に向かって足早に歩き出すと、、、じきに 「群集の一部」 となったのだ。



posted by Masa’s Pastime at 12:33 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月22日

今朝、カミさんの叫び声で目が覚めた。



「ウワーー、大変ー!」




昨夜遅くまで雑誌を読んでいて寝不足気味だった私は、、、最初寝ぼけていた。



しかし、めったな事では大騒ぎしないカミさんの叫びだけに、、、じきに頭に掛かっていた霧は晴れる。



まず 「心の準備」 を済ませ、、、聞いた。




「どうした?」



「見てよこれ! 床が水浸し!」



「まさか? 水槽か!」




慌てて布団から飛び出して隣室のドアを開ける。



すると、海水魚を飼っている90cm水槽の土台部分、ろ過装置の入っているキャビネットから相当な水が流れ出していて、、、ダイニングのフローリングが水浸しになっていた。




「何だこれ!?」



溜まった水にバスタオルを被せつつ、、キャビネットのドアを開ける。



すると 「ろ過装置」 から噴出した水がキャビネット内に充満していて、、、ドアの開口部からフローリングにどんどん流れ出て来るではないか!




カミさんは家中にありったけのタオルというタオルを引っ張り出し、、、水に被せる。



私はろ過装置の電源を切り接続しているホースを外し、、、更なる水の噴出を止める。



パジャマのまま水浸しになったものを全て拭き上げ、ろ過装置を分解し始めるまでに小一時間は掛かったろうか。




それにしても、昨日まで何でもなかったろ過装置が、何故急に漏水し始めたのか?



全部で三箇所あるろ過装置のパッキンを念入りにチェックするが、、、どれも異常はない。



3日ほど前にろ過装置の掃除をした際、「モーターヘッド」 の取り付けが甘かったのか?



しかしそうであれば、、、もっと前に漏水は始まっていた筈なのだ。




首を捻りながらろ過装置を組み立て直し、再度水槽と接続、、、、スイッチオン!



するとろ過装置はすこぶる軽快な作動音を響かせる。



やっぱり組み立てが甘かったのかなー?




びしょ濡れになったパジャマを着替え、シャワーを浴びて出勤の準備に掛かった。



納豆にご飯、ゆうべの残り物のおかずと味噌汁で朝飯を終え、歯磨きしていると、、、「ワー、またよー!!」 とカミさん。




「エッー?!」



見れば朝と全く同じ状態で、キャビネットから水が流れ出ているではないjか!



再び同じ処置を繰り返し、メーカーに問い合わせを入れた頃にはパスタイムの開店時間(11:00)を過ぎていた。




ちなみに電話口の担当技術者によると、「状況から判断して、モーターヘッド内部の水密部品の故障に間違いなし」 とのこと。



なるほど、これではいくら私がモーター外部のパッキンを調べても、異常は見つからなかった訳だ。




結局、代車よろしく 「替わりのモーターヘッド」 を送ってもらうことになり、、、何とか一件落着したのは正午過ぎ。



少々遅刻して店に出て、、、今こうしてパソコンに向かっている。




それにしても、、、これがたまたま私がうちに居る時間帯に起こったのは、まさに不幸中の幸いだった。



仮にこれが、家族全員で外出している時に起こったら?



ろ過装置は水槽の水が空になるまで水を噴出し、、、帰宅してみれば、フローリングは海水でふやけまくり、魚達は全滅間違いなし!!




今朝は少々バタバタして疲れたが、、、やっぱり私は 「ツイている」 のかもしれない、と思ったのだ。

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posted by Masa’s Pastime at 14:30 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月20日

思いっきり私事で恐縮だが、、、今月の18日、私は 「50回目の誕生日」 を迎えた。




さすがにこの歳になると 「ハッピーバースデイ、トゥーユー♪」 などという騒ぎはないが、、。




しかし近隣の友人一家から 「魚釣り用の網」 をいただいたり、年老いた両親に夕食をご馳走になったりしたのだから、これはまあ有難い限りである。





この半世紀を振り返れば、実に色々なことがあった。



しかしその全てを流れに沿って思い出すことは出来ず、、、記憶はちりちりばらばらな断片になっている。






保育園のお昼寝で使っていた水色の枕。



ツルツル冷んやりしていて、熊の刺繍が入っていた。




同じく保育園でのお弁当時間。



ある日、持っていった弁当箱を開けると、、、中身が綺麗に空っぽ。



これはオフクロの勘違いだが、、、担任の優しい保母さん(片山先生という名前だった)が、自分のお弁当を分けてくれた。




小学校の頃、ススキの野原を焼いた。



拾ってきたマッチで友達と火遊びをしたら、、、帰ってきてから火が燃え上がり、大騒ぎになったのだ。



これは結局、ずーと内緒にしていた。




中学、高校、浪人時代、大学入学・中退、そして就職。



フィリピン、インドネシア→アメリカ、、、と記憶は段々と最近のものになってゆく。




しかし新しい記憶がより鮮明かと言うと、不思議とそうではない。



むしろ反対なことが多いようだ。





そう言えば、昨日オフクロが言っていた。



50年前、私を産んだ日のことをハッキリ憶えている、と。



しかし半世紀前のことをそれほど鮮明に憶えている割には、、、待ち合わせの時間と場所は、間違えていた。




これはやはり 「老いる」 ということか?



私にしても、保育園の記憶はあるのに、 「先週の今日、晩飯に何を食べた?」 などと聞かれると、、、全く思い出せなかったりしているのだから。




いけないいけない。



ボヤボヤしている場合ではないのだ。



子供達はまだまだ幼いし、、、うちの連中の将来も 「マサズ パスタイム」 に掛かっているではないか。




論語によれば、50歳は 「知命」 



「50にして天命を知る」 ということのようだ。




天命、つまり 「天から与えられた私の使命」 



これだけは忘れないようにしないと。



「孔子」 に尻をペンペンされて、、、きっと、痛い目に遭うのだ。


posted by Masa’s Pastime at 13:40 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月17日

「これはいくらだ?」



「いくらでもいいよ。 もう朝のうちに殆ど売り切っちゃった残りだから」



時折、新たに入ってきたメンバー相手にやる気のない商談をしながら、、、彼と私は話しを続けていた。




大量の懐中時計を売り捌いたその彼は当時30前だった私よりまだ若く、二十代の半ばくらいか。




小柄で痩身、おおよそアメリカ人らしくないタイプで、、、風邪でも引いているのか、ひっきりなしに洟をかんでいる。





話しによると 「ダンボール詰めの時計」 の大半は亡くなった父親の遺品だが、、、引っ越しの資金が必要になったため、緊急に現金化することになったのだと言う。




父親の影響で 「古時計の会」 に登録してはいるものの、、、どうやら彼自身はあまり時計に詳しくないようだ。




いくら緊急に資金が必要な場面であったとは言え、、、彼の 「値付け」 がかなりトンチンカンだったのが頷けた。






「ズズズッ、チーン」




相変わらず、彼はしきりに洟をかんでいる。




「引っ越すって、一体どこに引っ越すの?」



私がそう訊くと、、、彼はやはりアメリカ人らしからぬ小さな声で、ボソボソと話し続けた。




「東海岸に行くんだ。 もう西海岸はこりごりだから。」




同じアメリカでも、ロサンゼルスのある西海岸から東海岸までは、約5000キロ離れている。



なんでわざわざそんなに遠くに?という私の疑問を見透かしたように、彼は言った。



「Hay fever(花粉症)なんだ。 ここじゃあ一年中咲いてる花の花粉のアレルギーで、鬱陶しくて堪らない。 あんまりひどいから、思い切ってこいつの咲かないところに行くことにしたんだよ」



なるほど、、、彼が頻繁に洟をかんでいたのは風邪ではなくて 「花粉症」 だったのだ。





あの後、私も 「花粉症」 になった。



毎年この時期になると、何処かに逃げ出したくなる。



そしてその度に、、、東海岸のどこかで暮らしているであろう 「彼」 を想い出すのだ。





(終わり)


posted by Masa’s Pastime at 19:21 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月15日

一般のメンバーにはまだ開場していないガランとした会場の一角に、、、そこだけ幾人かのディーラーがやり取りしているコーナーがあった。



「ん、なんだ?」



急いで駆け寄り、大男達の間に身をこじ入れてみると、、、フロアーに無造作に置かれた、いくつものダンボールが。



そしてその中には、大量の 「懐中時計」 が詰め込まれているではないか!!




「これはいくらだ? そうか、いただき! それじゃ、こっちは? 本当か? それなら箱ごと全部もらった!!」



先着の連中は貪るように 「アメリカ製の鉄道時計」 を買い漁っていた。




私を含めた 「業者」 連中は、普通なら 「値段の交渉」 を含め、それなりに時間を掛けることが多い。



しかしこの時は、皆そんな余裕はなかった。



何故なら、まだ若い大人しそうな売り手の提示する値段が、、、どういう訳だか、全く 「的外れ」 だったのだ。




何しろ普通なら 「$1000」 するような鉄道時計を 「$125でいいよ」 などとやっている。



これなら欲しいヤツは周りにいくらでもいるから、、、悠長に考えていたら、横から手が出てきて先に買われてしまう。



いきおい売り手ではなく買い手の方が 「我先に!」 とパニック状態に陥っている訳だ。 




私にとっての幸運は、周りにいたのがたまたま皆 「アメリカ時計の業者」 だったこと。



彼らが争うように買っていたのは、当地で人気の 「鉄道時計」 ばかりだったから。




ダンボールは、それなりに分別されていた。



大半がアメリカ時計の箱。



そこには彼らが血相を変えて群がっている。



しかし、スイスやイギリスの時計も、数箱分はあった。




殆どの連中が見向きもしないその箱の中身は、、、私がほぼ 「独占」 状態。



しかしいつライバルが現れるかも分らないから、手早く品定めした。



すると出てくる出てくる、、、、「Longines」 や 「Omega」 といった定番商品をはじめ、、、「Tiffany & Co」 や 「Patek Philippe」 それから 「C.Frodsham」 あたりのハイグレード品も混ざっているではないか!




開始早々いい時計を買えるだけ買って 「お腹一杯」 になった私と、ほぼ全ての時計を売り尽くしたその 「売り手」 はお互いに暇になり、、、どちらともなく世話話し。



じきに会場のアナウンスが流れ、一般のメンバー達が一斉に会場に流れ込んできた。





(続く)


posted by Masa’s Pastime at 17:09 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月13日

気がつけば2月も中盤に入り、大分日が延びてきた。



まだまだ寒い日が続く中、時折春めいた日射しもを感じることもあるし。




もう一月も我慢すれば、私の嫌いな冬もおしまい。




「よかったよかった」 と思いきや、、、ガーン!





朝のニュースを見ていたら、、、花粉の話しをしているではないか!




そうだった、、。




今年は例年より遥かに多くのスギ花粉が飛散するらしい。


震災のあった一昨年も去年も、花粉が少なかったから忘れていたが、、。




鼻は詰まるは目は痒いはで夜も眠れず、、オマケに日中はクシャミの連発で仕事にならない。




あの忌まわしい時期やってくると思うと、、、今からゾッとするのだ。





大体あいつら(花粉)は、やって来るタイミングが悪い。




寒くて長い冬を耐えに耐えようやっと春が、というところで、、、ガッカリさせる。




その 「嬉しがらせてガッカリさせるやり方(?)」 が卑劣ではないか!




毎年この時期になると、私は半分本気で 「花粉のない場所」 への移住を考えるのだ。




今から遡ること、約20年。



ロサンゼルス郊外のパサディナで行なわれた 「時計ショー」 



朝一番の 「業者タイム」 に会場入りした私は、数100ものテーブルが並ぶ会場の一角で、、、ちょっとした 「金脈」 を発見した。





(続く)


posted by Masa’s Pastime at 17:24 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月10日

さて、前回はアンティークウォッチ修復の現場において 「力加減」 が非常に大切、かつ曖昧だ、というお話しをさせていただいた。



実際、この 「力加減」 ほど、人に伝えるのが難しいものはない。



このくらいの太さのネジを、どのくらいの力で捻ったら頭が飛ぶか?



このくらいの太さのスプリングは、どのくらい曲がったら折れるか?




以前、建造物における構造体の強度を研究しているお客様に聞いたところ、専門的にはこれを 「座屈」 と呼ぶらしい。



このくらいの太さの柱にどのくらいの加重が掛かったら折れるのか?



特に大型の建造物においては、これらをきちんとした理論で数字化し、部材の選定や構造設計に活かしているとのこと。



「なるほどなー」 と思った。




しかし残念ながら、、、これもアンティークウォッチの修復現場では、現実的な話しではない。



何しろ、接する時計の 「年代」 「仕様」 「材質」 「経年劣化の状態」 がてんでバラバラなのだから、、、。



「キミキミ、1750年製のイギリス時計のネジは、5kgの力で捻ってね。」 などという訳にはいかないのだ。




結局、それは全て個々の時計屋の 「感覚」 に掛かっている。



「折れるまで曲げるなよ」 と言ったところで、「どのくらいで折れるのか分らない」 と言われると、、、説明のしようがないのが実際のところ。




かつてパスタイムには、「時計師志望」 の若者が相当数通っていた。



殆どは時計学校の生徒達で、、、有り難いことに 「パスタイムで仕事をしたい」 と言う。



かといって皆に、「ハイ、どうぞ」 と言えるほどうちは大きくないし、、、それに、大勢の新入りに給料を払うほどの余裕はない。




結果、私はいつも皆に 「とにかく自力でちゃんと動くようにしてみな」 と言って 「ほどほどに壊れたアンティークのムーブメント」 を渡し、見込みのありそうな子に関しては考えてみようと思ったのだが、、、この時、分った。



「力加減」 の感覚は、「子供の頃の遊び方」 と関係が深いと。



勿論生まれつきの向き・不向きはあるだろうが、、、かなりの割合で、後天的に決まっているような気がしたのだ。




誰がどう考えても 「壊れるだろう」 といういじり方をする子がいる。



時計の知識も豊富で、学校でも熱心に勉強しているような子が、、、片っ端に壊してしまう。



そういう子達にそれとはなしに聞いてみると、、、ほぼ例外なく子供の頃に 「物を壊して」 いなかったのだ。




「竹とんぼ作り」 でも 「プラモデル」 でも 「お父さんの日曜大工の手伝い」 でもいい。



そういうことを普通にしてきた子は、知らず知らずに身体で知っているのだ。



こんな固さのものをこんなに曲げたら 「ボキッ」 と折れるな、と。




ゲーム遊びやパソコンに夢中だった子供は、経験していない。



だから 「壊れない程度に曲げろ」 と言っても、、、本当に見当が付かない。



結果、こちらが 「エーッ!?」 と、びっくりするような壊し方をするわけだ。




「半日掛かって完成間近になった部品が折れた」 前回の冒頭に、話しは戻る。



どんなに一生懸命やろうと、地道に頑張ろうと、、、壊れれば、最初からやり直し。



全ては無駄、と言った。




しかし本当は、一つだけ無駄でないことがある。



いや、せめてそう思いたい、、。




今まさに 「ボキッ!」 と折れた、スプリングの鈍い反動。



その嫌な感触を、間違いなくこの指先は憶えている。



そしてデータ更新された私の指先は、、、きっとこの先の 「無駄」 を、省いてくれる筈なのだ!


posted by Masa’s Pastime at 16:19 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月08日

「ポキッ!」 「 おっと!、、、 あーあ、、、。」




9割方出来上がっていた細いスプリングが、、、完成間際で折れる。




削り出した面と面の角を砥石で落としている際、僅かに力を掛け過ぎた訳だ。





薄い 「鋼の板」 から 「髪の毛のような細長いスプリング」 を削り出すのに数時間。



その後、「焼き入れ・焼き戻し」 して、強度と粘りを確保し、、、そこから仕上げ研磨に入り、既に半日が経過。


しかしこうなれば全て最初からやり直し、、、まさに時間の無駄である。





この場合の失敗の原因はただ一つ。




そう、、、「力加減」 の誤りなのだ。





部品の製作に限らず、時計屋の仕事全般においてこの 「力加減」 というほど重要、それでいて曖昧なものはない。


先程のスプリングなどもそうだが、、、「何キロ以上の力をかけないように」 などというハッキリした数字の指標はなし。



要は、折れたら 「力の掛け過ぎ」 折れなければ 「許容範囲内」 という訳で、、、そういった部分は時計の各所に地雷のようにちりばめられている。



いや、、、むしろ、時計とはそういったものの塊と言えるかもしれない。 




解りやすいところで言えば、「ネジ」。



時計には様々な 「太さ・形状」 の 「マイナスネジ」 が使われている。



ネジ本体と頭が同じような太さの 「ずん胴型」 、頭の直径が大きくてネジ本体が細い 「テーブル型」、、、中には 「機止めネジ」 のように頭の部分が 「半月型」 になっているものもあるし、「オシドリネジ」 のように頭が細く、その下の方にかけて大きな段差があったりするものもある。




これらのネジを締め付ける際には、それぞれのネジの仕様に応じた 「力加減」 が必要。



「ずん胴」 若しくはそれに近いようなものは比較的しっかりした強度があるが、 「角穴車のネジ」 や 「シャトン止めのネジ」 のような 「極端なテーブル型のネジ」 を同じように締め付けたら、、、ネジの頭はあっけなくもぎ取れ、「????」 となってしまうのだ。




以前、某有名メーカーで仕事しているスイス人がパスタイムを訪れた際に 「私達メーカーではスリップ機構のついたドライバーを使っている」 と言っていた。



確かに、それぞれのネジに応じてトルク設定されたスリップ機構付きドライバーを使用すれば 「締め付けトルク」 は一定するし、ネジの破損も激減する。



ご存知の通り、自動車や大型機械の組み立てではとっくの昔から採用されているし、今日び、日曜大工センターなどで売っている市販の電動ドリルにも備わっている方式。



これなら 「ゴリマッチョな技術者」 が渾身の力で閉め込んだネジも 「スマートな女性技術者」 がおしとやかに閉め込んだネジも、、、全く同一の力で取り付けられていることになる訳だ。





しかし残念ながら、これはうちでは使えない。



何故なら、「決まったモデル、一定のムーブメント」 ばかりを組み立てするメーカーの仕事と違い、、、アンティークウォッチの修復現場では、今日は 「100年前のアメリカ製鉄道時計」 明日は 「300年前のイギリス時計」 などとバラバラの仕様のものに手を付けることになるから。



「ネジの太さ、形状」 をはじめ、「時計のグレードやネジの輝きから判断される材質の良否」 「経年劣化の具合」、それから指先に残る 「過去の失敗データ」 等を総動員して、、、その都度 「力加減」 する必要がある訳だ。





(続く)


posted by Masa’s Pastime at 16:01 | Comment(0) | 新着情報

2013年02月06日

とりあえず 「東急百貨店裏の焼き鳥屋」 に流れ込んだ私達一向。




ビールやカクテルで乾杯後、それぞれが食べたいものを次々と注文すると、、、それらが運ばれてくるやいなや、若い二人は、食べる食べる!




山盛りの焼き鳥をオカズに、最初からご飯の大盛り2連発!





特にS君などは、一杯目のご飯に箸を着けた途端 「大盛りお代わり下さい!」




正面に座った 「エングレイバーの辻本」 はパスタイム唯一の20代で、相当な 「痩せの大食い」 なのだが、、、さすがに2人と較べると 「食べ盛り」 は越えている感がある。





猛獣のような?二人の食べっぷりを見ながらチビチビ呑んでいた私は、、、思わず一昔前のことを想い出した。




かつてはうちの連中もそうだったのだ。




私以外の全員が20代で独り者だった頃、、、ほぼ毎日、全員で一緒に晩飯を食っていた。




その頃は皆飲むより食べるのに夢中で、、、たまに焼き肉など連れて行くと、それこそ目の前の肉が見る見るうちに消えて行く有様だったのだ。





しかし気がつけば、皆大人になった。




辛うじて若者と言える辻本以外、全員がとっくに三十路に突入。




最古参の 「岩田」 など岐阜の山中から出てきた時はまだ23で子供のようだったが、、、気がつけば来年で40。




食べっぷりはすっかり大人しくなり、、、、数年前に所帯も持ったと思ったら、未だに借家住まいの私を跳び越えて(?)、近隣に 「マイホーム」 もゲットしているのだ。





さてさて、数杯ずつのご飯を平らげた2人の若者は、、、PVの編集について相談し始めた。



どうやら実際に大変なのは、これからのようだ。




S君が散々撮影しまくった映像を絞りに絞り、「いい長さ」 にまとめる。



短か過ぎては内容不足になるし、、、長過ぎても、ダレてしまっていけない。




「BGM」 はどんな曲にするか?



何しろ 「音担当」 のH君は、このPVのためだけに、これから曲を作るのだと言う。



「既存の流行歌」 などを使うと著作権の問題が出てくることもあるが、、、それ以上に彼の 「音」 に対するこだわりは、相当なもののようだ。




「全て任せるよ」



「希望の長さ」 や 「曲の好み」 を聞いてくれた2人に、私は言った。




映像や曲の雰囲気が大事なのは、言うまでもない。



しかし、立場上この 「PV」 を宣伝広告の手段としてみている私と違い、、、彼ら2人はこれを 「自分たちの作品」 と捉えている。



空になった皿や焼き鳥の串を前に 「あーでもない、こーでもない」 と一生懸命に頭を捻っている2人の若者。




少なくともこのPVに関して言えば、、、彼らは、私以上に真剣なのだ!



だから中途半端に口を挟まずに、、、どんなものになるのか、楽しみにさせてもらおう。



そんな風に思ったのだ。




費用は決まっているが、、、時間は無期限。



映像マニアのH君と、音マニアのS君2人による、渾身の作品。



そんなパスタイムのPVが出来てきたら、、、あらためてこの場でご紹介させていただきたい。
posted by Masa’s Pastime at 16:53 | Comment(0) | 新着情報