2012年12月26日

空気の凍てつく今朝。



師走だ師走だといって走り回っていたら三鷹から 「特快」 に乗ってしまい、中野まで行ってしまった。




慌てて反対側の電車に飛び乗ると、これまた 「特快」 !




結局三鷹まで戻ってしまい、、、今度こそよく確かめて各駅に乗り換え、ようやく吉祥寺に到着して一息ついた。






2012年も残り僅かになった12月26日




パスタイムの営業も年内最終日になった。




あらためてこの一年を振り返ってみる。





前半期はニューモデルのカスタム腕時計シリーズのリリースに向け、挑戦に次ぐ挑戦。




というと少々聞こえがいいが、、、現実には 「出来ない」 「いや出来た」 「やっぱり出来ない」 「いや、何とかなった」 というようなことの繰り返しだったか。




簡単に見えることが思わず厄介だったり、、、諦めかけていたことが 「最後の一あがき」 で上手くいってみたり、、。



考えてみれば 「頭や紙の上で作るもの」 と 「実際に作り上げるもの」 とのギャップを埋めることの難しさに苦しんだ前半戦だったと言える。





後半は、かなりバタついた。



実にありがたいことに、カスタム腕時計もその他の商品や修理もそれなりに忙しくなり、5人全員がフル稼働。



なかなか思ったようにはかどらず 「納期」 の面でご迷惑をお掛けしたこともあったが、、、私としては 「80点程度」 は付けてもいい仕事の出来だったのではないかと思っている。




今、つくづく思う。



長引く不況。



国家財政の危機すら叫ばれる中、、、不幸にも廃業せざるを得ない同業者もいた。




そんな中で 「納期の心配」 をすること自体、どれだけ有り難いことか?!



うちはこんなことをやっている、一生懸命やっている、などと偉そうにラッパを吹いたところで、、、認めてくれる方がいなければ 「全て無駄」 なのだ。



これはいつでも同じことだが、、、一年を振り返らざるを得ないこの 「年の瀬」 には、特に強く心に迫るのだ。




スタッフ全員、今年もこうして無事に 「年が越せる」 こと。



本当に、本当に心から感謝致します。




本年も誠にありがとうございました。



2013年も、どうかよろしくご愛顧下さいませ。




                    マサズパスタイム   代表 中島正晴


posted by Masa’s Pastime at 18:45 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月21日

今日は、12/21日。



今年もいよいよ残り僅かとなった。




パスタイムの営業は12/26(水)が最終日。



しかしご存知の通り 「月・火」 は定休日だから、、、実質残りの営業日は4日間である。




店の前方では、エングレイバーの辻本が時折来客の応対をしつつ、「オートマタの懐中時計のフィギャー」 を修復している。



その他、渡辺は年内の修理品に没頭。



紅一点の本藤は 「銀行周り」 「電話の応対」 「各種材料の発注」 「修理画像の編集」、、更に 「スタッフの弁当調達」 に、手が開いたら 「時計修理」 と、、、半ばパニック状態。



そして店の奥では 「カスタム腕時計のケース」 を削り出している岩田の 「チビロボット」 が、朝から唸りをあげ、、、その脇で私はパソコンを叩いている。



これが今現在の店の状況。




11月から12月に月が変わるのも、12月が翌年の1月に変わるのも実質的には何も違いがないのだが、、この一ヶ月の月変わりだけは、劇的なのだ。



仕事にしろプライベートの行事にしろ全て 「年内」 という区切りの中に存在し、区切りがつかないものは 「翌月」 ではなく 「翌年」 に残すことになるから、、、どうにも気持ちがすっきりしない。




だから、残り僅かな時間の中に、朝から晩まで全ての予定がギュウギュウ詰め。



結果、誰も彼もがバタバタと走り回り、世の中全体が騒がしくなるこの時期。



「師走」 とは実によく言ったものだとつくづく、、、思っている暇すらないのだ!


posted by Masa’s Pastime at 13:11 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月19日

今日、日曜日のブログ 「時計雑誌のコミック」 に、件の漫画の画像を貼り付けました。



ご興味のある方は、、、是非とも笑ってやって下さい。





さてさて、「笑う」 といえば、、、最近 「笑うに笑えない」 出来事があった。



先月、中学の同窓会に参加したのは、この場でご紹介した通り。




大半の連中とは35年ぶりの再会だったが、、、そんな中 「背高のっぽのB」 は 「ジャンクヤード」 の近所に住んでおり、時折店に寄ってはライターや指輪を買ってくれていた。


といっても、それ自体が既に20年以上も前のこと。




やがて、若くして郊外に家を建てたBは引っ越してゆき、、、以来顔を合わせることはなかったのだ。






同窓会で再会し、お互い昔話に花を咲かせているうち、、、「ああ、そうだ!」



想い出したように、Bが言った。



「俺の腕時計、あちこち相談したけど古いから直らない、って言われて諦めてたんだ。 お前のところで直せないかな?!」





年式やメーカーを聞いたところ、時計は 「1950年頃のロンジンの腕時計」 とのこと。



特に水没させたりした訳ではなく、、、長年分解掃除せずに愛用しているうち、いつの日か動かなくなったらしい。



「今度店に送ってくれよ。 直るのは間違いないから」





そんな訳で送られてきた腕時計。



いくらか錆びている部品があるくらいで、部品の状態には大きな問題がなかったが、、、調整関係は甘かった。



まず 「ヒゲゼンマイの中心」 が調整しきれていない。



更に 「テンプ」 にはかなりの片重りが残っており、、、それが原因で、姿勢変化による歩度のバラ付き、いわゆる 「姿勢差」 が大きい状態。



部品が錆びているのは持ち主の使い方の問題だが、、、調整不良に関しては、純粋に 「時計屋の腕」 の問題。



これでは動かなくなる前も結構な誤差があった筈だが、、、鷹揚なBは、特に気にしていなかったようだ。





一通りの処置が済んだ日の夜、Bに電話を入れた。



「えっ、直ったか! いやー、ありがとう! 恩に着るよ。 金はすぐに払うから振込先を教えてくれ。」



「うん、こちらこそありがとう。 それはそうと、最後に修理に出した時計屋はどこだ?」



ちなみに、それが時計の持ち主と懇意にしている時計屋だったりした場合には問題になるから、こういうことは普段あまり聞かない。



しかし相手が同級生だったこともあり、、、ちょっと聞いてみたくなったのだ。





返ってきた答えは、予想外だった。



「えっ? ああ、それが1度もやってないんだ。 20年前にお前のところで買って以来、一度も手入れしないで使ってた。  やっぱり機械物はメンテナンスしないとダメだよなー。 今度からちゃんとするから、その時は頼むな。」



「そ、、、そうか、分った。 うん、それじゃ近々一杯やろうな。」 



「オーケー。それじゃ。」





「、、、」



受話器を置いた私は、、、しばらく口がきけなかった。



頬っぺたが少し熱い。





開店して間もない 「ジャンクヤード」 で、、、「B」 に時計を買ってもらったことすら忘れていた。



しかし、ショックだったのはそのこと自体ではない。





当時 「ジャンクヤード」 にいたのは、私と今のカミさんだけ。



ということは、、?



自虐的な笑いが込み上げてきた。





その時計を最後に整備した 「へぼ時計屋」 とは?



「しょうがねェな、こんな仕事してー」 などと、内心毒づいていたその相手とは?



他の誰でもない、、、20年前の 「私自身」 だったのだ!


posted by Masa’s Pastime at 17:24 | Comment(0) | 新着情報

懐中時計 オーダー 東京

懐中時計 オーダー 東京

懐中時計 オーダー 東京



「おはよう!時永さん。」



長女がふざけて私を呼んでいる。




「ん?、、、ああ、そうか」




二日酔い気味の頭では、、、理解するのに少々時間が掛かった。




長女は、前日に出版された 「時計ビギン」 に掲載されているコミックの話しをしているのだ。






編集部から送られてきた雑誌がパスタイムに届いたのは前日。




「時計Begin」 の連載は既に7回目になっているのだが、マンガ好きの長女に見せれば他に何もしなくなるから、一度も持ち帰ったことはなかった。




しかし今月号の 「タイムピース」 のストーリーにはパスタイムが登場するから、、、今回だけ例外的に解禁したのだ。





連載が始まってから早くも一年以上。




毎回読み切りのストーリーを考えているのは 「村川さん」 という脚本家。




作画は、漫画家の 「カンフー中野さん」。




時計雑誌のコミックということで、、、内容はそれなりに専門的でマニアックになる。




そんな訳で、去年の構想の段階では脚本家、漫画家、編集者の皆さんにパスタイムにお集まりいただき、時計屋の現場やアンティーク時計の修復を見ていただいた。




最終的に、取材協力や監修は私が引き受けることに。





流れ的に 「私似」 になった主人公の時永は、、、現行の機械式時計が使い捨てであること等、一般の特集ページでは掲載出来ない真実を、好き放題に口にする。



但し、仕事の 「報酬」 は全く別物。



何しろちょっとした時計の修理で、「何百万!!」



まるで 「ブラックジャック」 や 「ゴルゴ13」 を彷彿とさせるような桁外れの報酬額に、、、シナリオの校正をしながら 「いいなー、、」 と羨みながら読んでいるのだ。





一般の書店の他、コンビ等でも並んでいる 「時計Begin」



ご興味のある方は、是非一度ご覧下さいませ。


posted by Masa’s Pastime at 10:12 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月12日

「いい店があるから、来年是非連れて行くよ」




仲間の一人からそう言われた去年の今頃、、、私は骨董祭参加のため横浜に集まったアンティーク屋仲間に呼ばれ 「関内のおでん屋」 で飲んでいた。





黒光りする店内。




飴色になったカウンター。



相当な歴史のありそうなその 「おでん屋」 も私の好みだったが、、、皆の話題は、もっぱら前夜の店に対する賞賛で尽きない。





「へー、どんなものが出てくるの?」



興味をそそられて尋ねても、、、「詳しくは来年の楽しみ」




「とにかく和食系の店」 とだけ教えられていたのだが、、、ちょうど一年経った先週の木曜日、ついにその日がやってきたのだ。





夕方5時頃、、、仕事をしているとマナーモードの携帯電話が震えた。



「エッ、まだ吉祥寺? じゃあこっちは先に行ってるから、東戸塚の駅に着いたら電話して」



「東戸塚? 分りました」



そう言えば去年、横浜からは少し離れたところ、と聞いていたが、、。 





店を岩田に任せ慌てて井の頭線の電車に飛び乗ったのは5時半頃だったか。



一旦予約していた横浜のビジネスホテルにチェックインし、、、そこからタクシーで約40分。



聞いた店の名前がすんなりとカーナビに入ったところをみると、そもそも普通に営業している店のようだが、、。



それにしても、皆横浜に泊まっているのだし、明日の会場も横浜なのに、、、何故こんなに遠くまで、、?




不思議に思っているうち、7時半頃にそれらしき店に到着。



どう見ても、ごく普通の小料理屋のような構えの小さな店の暖簾をくぐると、、、小上がりを占領している仲間の顔が目に飛び込んで来た。



「おっ、ようやっと来たなー!」



お膳の脇には焼酎のビンが2、3本立ててあり、総勢7人の仲間はみんな結構出来上がっている様子。




「なんだか、、普通の店だなー」



座敷に腰掛けた私は駆け付けのビールをのみながら、、、内心拍子抜けしていた。



周りを見ると、7〜8人掛けのカウンターには常連らしきお客さんが一人だけ。



その他は私達が占領している小上がりのみ、の小さな店だ。




まあいいや。



元より昔の仲間に会うこと自体が目的なのだ。



今は時計屋になったパスタイムも、開店後数年は 「ジャンクヤード」 というアンティーク屋だった。



骨董祭、百貨店催事、露天の蚤の市、、、あちこち出店していた頃。



右も左も分らず古物の世界に飛び込んだ私に何から何まで教えてくれたのは、、、ここに今集まっている仲間、いや先輩達なのだ。




お通しをツマミながら 「お湯割り」 に移り、懐かしい話しに花が咲いた頃、、、運ばれてきた大皿に目を疑った。



色合いも鮮やかなクジラの刺身が、大皿一杯に盛られている。



「それ、うちらはもう食べたから、後は全部任せたよー」



皆、私を見てニヤニヤ。



これが一人前か、、?



しかし腹が減っている上に大好物だから、、、遠慮なく平らげた。




その後、大量の 「生ガキ」 「白子のポン酢(これは普通の量だった)」 をいただき、何杯かのお湯割りでいい調子になった頃、、、今度は山盛りの 「河豚の空揚げ」 



幸福感に浸りつつそれをやっつけていると、、、追い討ちを掛けるように大皿の 「刺身の盛り合わせ」 が!



しかもマグロ、タイ、ブリ、イカ、貝類の盛り合わせの刺身は、全てピンピンの上等ではないか!





仲間の一人の奥さんが、悪戯っぽく私に聞いた。



「中島君、いつも釣りたての魚食べてるだろうから珍しくもないだろうけど、、でも美味しいでしょ?!」



美味い。 間違いなく美味いのだ。 



しかし、、、この量は、一体どうなっているのだ?




それでも余力のある仲間と一緒に刺身をつつき、、、何切れか残ったマグロとブリ以外は何とか片付けて飲み続けた。



気が付けばいつの間にやら時間は10時を回り、、、宴もたけなわ。



良く喋り、良く飲み、良く食べて皆、大満足。




しかし、そろそろお開きで横浜に戻り、2次会かな? と思ったその時である。



あろうことか、ニコニコ顔の女将がまたまた 「大皿一杯に盛られた牛肉2皿と鍋」 を運んでやってきたのだ!




こうなればもうヤケクソだった。



「来年のお楽しみ」 とはこのことだったのか!



しかし美味い、しゃぶしゃぶも間違いなく美味い。



肉が空になり、全員が天井に腹を向けた頃、、、再び女将がやってきた。



「お雑炊にしますか?うどんにしますか? それともそれぞれの鍋で両方やりましょうか?」






7人の大人が全員太鼓腹になったのは、11時過ぎ。



受け取ったお勘定を見て、再び唖然とした。



「¥43.000」



7人全員で 「¥43.000」 、、つまり一人 「約¥6.000」、、。



これは何かの間違いではないのか!?




何本もの焼酎を空にして、あれだけの料理を食べ尽くしたのだ。



私の到着する前からだから、、その間、約5時間以上。



何かカラクリがあるのか?



しかしこの店の馴染みらしい幹事の 「和物骨董屋」 によると、、これで 「いつも通り」 だという。




店名のご紹介を許可いただけなかったのは非常に残念、。



しかし確かに客が殺到したら、と考えると仕方がないか。



「どうだあの店? 驚いたろう?!」



仲間の一人にそう言われるまでも無く、、、キツネにつままれたような私はフラフラと横浜のホテルに戻ったのだった。


posted by Masa’s Pastime at 18:31 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月09日

懐中時計 オーダーメイド 東京 透かし彫り

懐中時計 オーダーメイド 東京 透かし彫り

懐中時計 オーダーメイド 東京 透かし彫り

懐中時計 オーダーメイド 東京 透かし彫り

懐中時計 オーダーメイド 東京 透かし彫り



いく度か途中経過をご紹介した 「透かし彫りのカスタム懐中時計」 が、ようやっと完成した。




ご注文をいただいたのは暑い夏の盛りだったが、、、エングレイバーの辻本がムーブメントを彫り終え、ケースの製作と時計のレストアを担当した岩田が仕事を終えたのが今週初め。




気がつけば季節は完全に移り変わり、コートの襟を立てて歩く季節になっていた訳だ。






それはさておき、完成した時計の仕様を改めて見直してみる。




ベースになったのは、19世紀末のスイス製ニッケルムーブメント.



ムーブメントには銘が無いが、「J.J.Badollet & Co」 が製作し、ニューヨークのジュエラー 「T.Dean Hawley」 が販売した時計であることが分っている。






ムーブメント径は約43ミリのフルサイズ、アメリカ規格の18サイズ相当。




「4/3」 タイプの受け板は充分な厚みのある頑丈なムーブメントで、、、これだけ広範囲に彫り抜いても、強度的は不安は微塵もないものだ。






製作したケースの材質は、スターリングシルバー。




加工前の材料は、金属材料メーカーに特注した 「継ぎ目のないドーナッツ状」 の3つの銀塊である。




この材料は 「調達コスト」 の面でかなり難があるのだが、、、銀の角棒をリング状に曲げてロウ付けした場合と異なり、加工後のケースに 「ロウ目」 が出ることがない。



そんな訳でコストの面には目を瞑り、うちの 「カスタム腕時計のケース」 にも広く使用している材料だ。






さて、用意された銀塊は、岩田の設計・プログラミングにより 「ベゼル」 「センター」 「バック」 とNCフライスが削り出しつつ、同時にネジ切り加工する。




こうして出来上がったケースパーツは次に辻本の手に渡り、、、旋盤やヤスリ細工によって 「ペンダント部分」 が製作され、これがケースにロウ付けされる。



ちなみに、この時計の提げ環(紐やチェーンを取り付ける輪)には 「そろばん玉のような鍔」 が2つ付けられているが、これはチェーンや組紐がポケットの中でリューズに巻きつくのを防ぐ為の工夫で、19世紀末頃のアンティークポケットウォッチにも見られる仕様だ。





一通り形になったケースは充分に研磨・洗浄され、これに今回注文主の希望で外注した 「途方も無く高価な特大サファイアクリスタル」 を両面に取り付けて、、、ケースの出来上がり。  



更にこれがムーブメントのレストアにあたっていた岩田に渡され、ムーブメントをケーシングして全て完了。





こうして4ヶ月に渡った 「透かし彫りムーブメントのカスタム懐中時計」 のロングプロジェクトは無事完了。



そして今日の昼過ぎ、、、晴れてオーナーのポケットに収まったのだ。


posted by Masa’s Pastime at 15:15 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月05日

「まったく、、、時計なんか携帯電話に付いてるじゃない。 必要ないわよ。 無駄!」



時計のショーケースを前にして、旦那さんが奥方に叱られている。




これは、ある日のパスタイムでの光景。




実をいうと、それほど珍しくない、、、というより良くあるケースだ。





時計を 「時間を知るための道具」 と考えた場合、奥方の意見は至極もっともだ。



いや奥方だけでなく、これは世間一般に広く受け入れられる意見であろう。




一方で時計そのものを愛する愛好家にとっては、時計は単なる 「道具] ではない。


こういった人々は、工芸品として、美術品として、そして精密機械としての美、、、つまりおおよそ日常の必要性からはかけ離れたものを求めている訳だ。






私達の先祖が、原始生活を始めた頃のことを考えてみよう。



皆の興味の対象はまず、「飲む(呑む、ではない)」 こと、「食べること」 だったろう。



草をむしったり木の実を拾ったり、それから動物や魚を捉えたり、川や湖の水を飲んで生きていた筈だ。





最初のうちは何でも 「手掴み」 だったろうが、そのうち効率良く獲物を捕らえたり水を汲んだりするために 「道具」 を作るようになる。



この時点では、道具はあくまでも必要な目的を達成するためのもの。



だから石器時代の道具には不必要な装飾などが施されていない。





しかし、そのうち生活が安定してくるとどうなるか?



よりおいしい食べ物、よりも見栄えのいい衣服、より快適な棲家、と欲が出てくる。



そしてこの頃になると、道具や棲家の壁に模様が刻まれたりするように。



この時点で 「無駄」 が出現するわけだ。





動物の行動にはほとんど存在しない、この無駄。



ある意味 「高度な知能、知性」 の現れとも言えるが、これが更に磨きぬかれ、やがて 「芸術」 の域に達するのは皆さんご存知の通り。





話しを 「時計」 に戻すと、、道具として優れた時計は巷に溢れている。



定期的な電波補正により誤差がなく、尚且つギリギリまで低コストになった時計。



どこに居ても正確な時間を知る為の道具であればこれほど優れたものは過去に無かったし、道具である以上それでいいのだ。





しかし当然のことながら、、、これらはちっとも面白くない。



何故ならそこにあるのは利便性だけで、「美しい」 とか 「心が躍る」 というような感動とは無縁のものだから。





パラドックスのようだが、、、 「面白くない」 というのは大変な 「時間の無駄」 ではないか?



人間オギャーと生まれた瞬間からやがて土に帰るまで、時間は限られているのだ。



その限られた時間をいかに楽しめるか?



いつか 「これでおしまい」 という時に 「あー、面白かった。 充分に楽しんだから、もういいや」 と納得出来るか。



無論 「人生観」 は人それぞれだが、、、恥ずかしながら崇高な人生観を持たない私は、いつもこんな風に思ってしまう。



「面白くないもの」 は 「無駄なもの」 だと。




もっとも、こんなバカ話を店頭の奥方にすることはない。



何故なら、、、聡明な奥方は、そんなことは良くご存知だから。



ご主人が見ていた時計をキラキラしたダイアの指輪にすりかえた途端、、、「アラッ、綺麗!いいわねー!」



これこそまさに 「無駄な」、、いや 「必要な」 ものではないか!!



posted by Masa’s Pastime at 17:05 | Comment(0) | 新着情報

2012年12月02日

オーダーメイド 時計 東京 ギョーシェ
INTERNATIONAL カスタム懐中時計 ギロシュダイアル(グレンドルジュ)


オーダーメイド 時計 東京 ギョーシェ
INTERNATIONAL カスタム懐中時計 ギロシュダイアル(グレンドルジュ)

オーダーメイド 時計 東京 ギョーシェ
INTERNATIONAL カスタム懐中時計 ギロシュダイアル(グレンドルジュ)


オーダーメイド 時計 東京 ギョーシェ
INTERNATIONAL カスタム懐中時計 ギロシュダイアル(グレンドルジュ)

オーダーメイド 時計 東京 ギョーシェ
INTERNATIONAL カスタム懐中時計 ギロシュダイアル(グレンドルジュ)



有り難いことに、このところ 「カスタムメイド」 のご注文が増えている。



好みのアンティークムーブメントを使用し、ケース、ダイアルをお好みのデザインや材質で作る。



お客様によっては、ムーブメントにも彫りを入れたりネジを青焼きしたりして、より理想の形に近づける方も。




もちろん 「既存のアンティークウォッチ」 をご購入いただくのも 「カスタムウォッチ」 をオーダーいただくのも、それから 「大切な時計の修理」 をお任せいただけるのも、、、有り難いのは全く同じ。



ただ 「カスタムメイド」 の時計をご注文を頂く場合、オーダーいただく時点ではそれを手掛ける私達自身にも完成形は見えていない。



そういう意味で、その完成時に特別な感慨があるのは確か。




ケース製作、ダイアル製作、と手分けして少しづつ作業が進む。



スケッチに描かれているものが、徐々に目の前で現物となって出来上がってゆく。



実際には、思ったような加工精度が出なくて作りたてのケースを潰したり、、、彫り終わったダイアルの雰囲気が気に入らずにやり直したり、ということも多々あるが、、、。



最終的には、何が何でも 「出来るまでやる」 



全て、これに尽きるのだ。




苦心の挙句、「作品」 が完成した時の気分は、何とも格別。



舞台裏の話しで恐縮だが、、、まだ注文主に見せてもいないうちに 「おおーっ」 とか 「キターッ」 などと、職人同士で盛り上がっていることも多い。




もちろん 「作り手の満足」 と 「注文主の満足」 は必ずしも同一のものではない。



勝手に自分好みに仕上げて 「職人の独りよがり」 になってしまうことがないよう、細心の注意は必要。



しかし経験的には、作り手が大喜びするような仕上がりは、注文主の満足にも繋がるケースが多いと思っている。




さてさて、本日納品差し上げた時計は、インターナショナルのムーブメントを使用した 「カスタム懐中時計」



元々付いていた 「オリジナルのステンレスケース」 「アップライトのダイアル」 は大切に保管しつつ、、、新たに 「ギロシュダイアル」 「青焼きのブレゲ針」 「グラスバックのシルバーケース」 を製作。



更にムーブメントは受けネジを 「青焼き」 するとともに完全に 「レストア」 というのが、今回の依頼内容。



ちなみにギロシュダイアルの 「スモールセコンド・ディスク」 は シックな 「梨地仕上げ」



シルバーケースは、裏表を 「捻じ込み式の防塵仕様」



またボウ(下げ環)はK18のピンクゴールド、リューズもそれに合わせた色味のものを、という詳細であった。




そして本日午後の 「お披露目」



出来上がった品物を、初めてお客様の顔にお見せする。



ご覧になった瞬間に広がる笑顔。



しかし安心するのはまだ早い。




その笑顔が 「職人に対する気遣い」 を含んだものなのか?



或いは 「掛け値なしの満足感」 の現われなのか?



後者であることに確信を持てた瞬間、小心な私の仕事は完了し、、、心から一緒に笑えたのだった。


posted by Masa’s Pastime at 16:02 | Comment(0) | 新着情報