2013年04月28日

先週の金曜、いつもの魚吟で寄り合いがあった。




メンバーは東京で仕事を始めたばかりのスイスの 「F氏夫妻」 と去年シンガポールから戻ってきたフランス人の 「Pさん」 、それにうちの家族で、総勢7人。




F氏とPさんは初対面だが、以前から両氏にはそれぞれの話しをしてあった。




つまり今回の集まりは、晴れて希望の来日が叶ったF氏の歓迎会、そして以前から話しをしていたPさんの紹介も、と言う趣旨だった訳だ。





当日の夜、仕事の都合でいくらか遅れた私が魚吟に到着すると、PさんとF氏は、隣同士に座っている。




既に互い話しは進んでいたようで、初対面の緊張感といった感じはない。




国こそ違えど、元々同じ 「フランス語圏」 の人間同士。




共通の知人である私が居なくても、お互い打ち解けるのに時間は掛からないだろう。




ありがたいことに、その点は私が考えていた通りだった。





さてさて、、、2人は他の5人と同じように寿司や刺身を綺麗に平らげ、そしてそれぞれの故郷の話しに花が咲く。




F氏は故郷の料理 「チーズフォンジュ」 について、皆に説明した。




「冬の寒い日に、チーズやワインポテトを入れて、、、」 



聞いてみれば、どうやら日本の 「鍋」 の感覚に近いものにも思える。




「そうか。 チーズフォンジュは元々スイスのものだったよね?」




何気なしに私がそう言った。



すると、私の問いに、一瞬F氏の言葉が詰まる。




彼は隣のPさんをチラッと見ると、、、ちょっと困ったような顔をしながら、こう言った。




「うーん。 マサさん、聞いちゃいけないこと聞いたね!」



Pさんの方は、、、ちょっと苦い顔をしつつも、何となくニヤニヤしている。



それを見て、一同大笑い!!



どうやら 「チーズフォンデュの起源」 に関しては、スイス人とフランス人の間で、触れてはならない 「聖域」 のようで、、、、そこに事情を知らない私が思いっきり切り込んでしまった格好だ。




笑いの渦が治まると、、、フランス人のPさんが説明した。



「私達フランス人としてはね、、、ワインの生産地でないスイスは、チーズフォンデュ発祥の地にはなり得ない、という見解なんだ」



ここですかさず、F氏が反論。



「作ってるよ。 うちの方でも、昔から白ワインは作ってる!」



ちょっと赤い顔をしている。



ここでまた、一同爆笑。



実に愉快な宴会になった。




帰りの満員電車の中、Pさんが言った。



「Fさんは純粋だし、狡さのかけらも無い、素晴らしい若者だね。 それに、マサさんの計画しているパスタイムのオリジナルムーブメントの構想にも、とても興味を持っている。 損得抜きで、何とかパスタイムの力になろうと考えてるみたいだよ。」



翌日、店に現れたF氏もこう言った。



「昨夜はありがとう! Pさんもいい人で楽しかった。 是非また一緒にやろうね。」



友達を誉められれば、誰でも嬉しいに決まっている。



友人同士が互いに気に入ってくれて、、、私にとっても、久し振りに 「言うことなし」 の気分だったのだ。


posted by Masa’s Pastime at 15:17 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月20日

前回このコーナーで触れた、パスタイムの 「前面ショーケース」 の工事が完了した。



極めて簡素な木の棚だったのが、、、今回の工事で少しはショーケースらしくなった格好。




実は今回の改装にあたっては、少々迷った部分があった。



以前にもお話した通り、前面ガラスのそれぞれの端っこには 「エングレイバーの辻本」 と私の作業台がある。



これは言うまでもなく、道を通る人から作業が間近に見えるようにしている訳だが、、、今回、この作業台の前面の部分も 「ショーケース化」 してしまおうか迷ったのだ。




道行く人には 「興味はあるが、わざわざ店に入るほどでもない」 とか 「中に入って良く見てみたいが、買い物があるかどうか分らないし、ちょっと入りにくい」 などという思いもあると思う。



実際、私などはまさにそういうタイプで、、、街中でちょっと興味を覚える店を見つけても、結構入るのに身構えてしまうことが多いのだ。




前面をショーケース化した場合、当然、陳列可能な商品のボリュームは、大幅に増える。



こうなると、店に入らなくても、通りに居ながらにして、かなりの商品を見ることが可能。



そんな訳で、、、「実際の作業が目の当たりに見える」 というメリットを採るか、それとも 「外に居ながら充分な商品のラインナップが見える」 という方を採るかという選択。




結局、私は後者を選んだ。



パスタイムの 「売り」 は、販売している 「時計」 だけではない。



ご存知の通り、今日び 「アンティークウォッチ」 などインターネットオークションやサイトに溢れかえっていて、入手すること自体は、誰にでも出来る時代。



しかし、確かな素材を見抜く 「目」、 それから 「確かなものにする技術」 は、、、溢れかえってはいない。



私としては、これこそがパスタイムの 「主力商品」 だと思っている。




「へー、こんな風に時計の部品を作るのか」



「あっ、あの人、文字盤に数字を彫ってる!」



デモンストレーションではない、実際の作業風景。



そんな主力商品をお見せする 「ショーケース」 を、、、無くしてしまう訳にはいかないではないか!




子供達がガラスを突付いて、話し掛けてこようと、、、間近に覗き込んでいる方と顔が合って、ちょっと恥ずかしくなろうと。



パスタイムの 「窓際族」 は、、、、これからも、居座り続けることになったのだ。

東京 懐中時計 腕時計 オーダーメイド

東京 懐中時計 腕時計 オーダーメイド

東京 懐中時計 腕時計 オーダーメイド

東京 懐中時計 腕時計 オーダーメイド





posted by Masa’s Pastime at 16:39 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月14日

今年に入って以来続いていたバタバタが、いよいよピークに達している。




「年度末」 や 「年度始め」 という世間一般の繁忙とは無縁な筈のパスタイムだが、、、何故か、今年は慌ただしいのだ。




残念ながら、これは 「注文が殺到して商売繁盛、嬉しい悲鳴」 などという訳ではなく、、、今までやらなければいけなかったことを先伸ばしにしてきたツケが回ってきただけの話しだが、。





まずは店のディスプレイ。




パスタイムは井の頭通りに面していて、その前面は全てガラス張り。




その一方の端にエングレイバーの辻本、もう一方の端に私の作業台があり、中央の自動ドアを除くとあとは通りに面した商品のディスプレイの棚になっている。





このディスプレイは、ハッキリ言って手抜き。




5年前同じ吉祥寺の南町から越して来た時に作ったものだが、、、簡単に言うと、木の棚板の上に布を敷いて時計を並べているだけだ。




いつも 「せっかくのスペースがもったいないなー、早くちゃんとしなきゃなー」 と思っているうち、5年が過ぎ、、、というわけで、今回 「スポットライトを内蔵した見栄えのいいケース」 を設置することにしたのだが、来週はその工事が入る。





次に、店の 「パンフレット」




今までは、せっかく遠方はるばるご来店いただいても、お持ち帰りいただけるパンフレットがなかった。




「インターネットでご覧いただけます」 などと言ったところで、、、「パソコンをやらない派」 の方も、結構いらっしゃるのだ。




店で色々説明されたはいいけれど、、、うちに帰ってから、写真や説明文をよみながらじっくり検討したい。




私などもそっちのグループに属するが、、、パスタイムでお渡ししているのは、ベラベラのご案内一枚。




これではやはり、手落ちがあると言わざるを得ない。




と言う訳で、これも現在 「アンティークウォッチの商品群」 から 「カスタムウォッチの詳細」 「修理業務の内容」 に関して紹介したパンフレットを製作中。





さてさて、まだある。




以前このブログでご紹介した、PV(プロモーションビデオ)の製作。




「若者二人」 の力作は先週完成し、基本的な部分では文句なし。




しかし紹介するカットの選択など細かい部分での修正は必要で、これは来週あたりに最終の詰めを迎える。





と、なんだかんだやっているうちに、、、肝心の 「時計の納期」 が!




こちらは 「手が空いた時に」 という訳にいかないが、そういうときに限って、手の掛かる難物に出くわし、、、、なかなか思ったように捗らない。




そんなこんなで、気付けば今年の 「新年度」 は、、、バタバタのスタートとなっているのだ。


posted by Masa’s Pastime at 18:12 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月10日

昼過ぎの1時頃、予定通り 「F氏」 はパスタイムに現れた。




お互い再会の挨拶もそこそこに、時計の話し。




しかし話しが一息つくと、彼は背中のバックパックを下ろし、、、中からチョコレートのセットを店に一つ、それから可愛らしい 「ウサギ型のチョコレート」 をうちの娘達に、一つずつくれた。





礼を言って受けとる私の前で、更にバックパックをゴソゴソし始めるF氏。



「これはマサさんに」




そう言って差し出したクリアーファイルを受け取ると、、、挟まれているのは、一枚の紙。




「んっ?!」




馴染みのない方には一枚の 「表彰状」 か何かに見えるだろうか?



しかし、アンティーク時計屋なら誰でも分かる、、、時計メーカーの 「保証書」、、、それも相当昔のもの。



銘を見れば、、、私の好きな 「Louis Audemars」 ではないか!




「Louis Audemars」 は今は無きブランドだが、かつて20世紀の初め頃までは、数々の名品を残したスイスの最高級時計メーカー。



現在、市場に残された良品は数少なく、、、私もたまに入手しては、その贅沢な仕上がりに溜息している時計なのだ。




その 「Louis Audemars」 が時計の納品の際に発行していた保証書、しかも全くの 「未使用品」。



日付の欄は、「19_」 と1900年代の19の後がブランクになっているから、20世紀に入って使用されずに、そのままどこかで保管されていたようだ。



もっとも、一般的な時計の愛好家にとってはさほど価値のあるものではないだろうが、、、私にとっては、大変興味深い資料と言える。




F氏によると、、、彼はこれをスイスの 「時計の蚤の市」 のようなところで見つけたらしい。



そして以前 「Louis Audemars」 の時計について熱く語っていた私を想い出し、、、わざわざ土産に持って来てくれたのだ。




「あんまりペラペラなもんだから、皺にならないように持ってくるのに苦労したよ」



そう言って、イタズラっぽく笑ったF氏。



聞けば、日本の支社で仕事をし始めて、まだ数日。




不慣れな環境、、、それから言葉の壁に 「ムズカシイー」 と日本語の感想。



近々この辺で一杯やろうと約束すると、、、ニコニコしながら、バックパックを背負って帰って行った。


腕時計 懐中時計 東京 オーダーメイド

腕時計 懐中時計 東京 オーダーメイド

腕時計 懐中時計 東京 オーダーメイド

posted by Masa’s Pastime at 15:56 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月07日

春の嵐から一夜明けた今日、、、以前ご紹介した 「スイスのF氏」 が店に来ることになっている。




最後に会ったのは、去年の冬だった(2/29ブログ 「F氏との再会」 ご参照下さい)。





スイス時計メーカーの技術者である彼のかねてからの夢は 「若いうちに日本で暮らしてみたい」




この一、二年、その実現のために腐心していた彼と彼の日本人の奥さんは遂にその夢を叶え、、、この春、来日。




晴れて4月1日から、日本の支社で、勤務を始めたところなのだ。





毎回、会えば当然、時計の話しになる。




こっちはもっぱら、新しく取り組んでいる 「カスタムウォッチ」 のプロジェクトや、「オリジナルムーブメント」 の構想について話し、、、彼は彼のライフワーク?である 「ユリス・ヤーゲンセン」 のアンティークムーブメントの再生記録の写真や、資料を披露してくれる。





さてさて、今回はどんな話しになるのやら?



そろそろやって来そうな時間だから、、、この続きは、また来週!




posted by Masa’s Pastime at 12:28 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月05日

先週のある日のこと。



その日の帰り道、私はちょっとイライラしていた。




昼間、嫌になるような出来事があって、夜になってもなかなか気分が切り替わらないでいたのだ。





店の連中と別れて駅前に着いたがどうにも気分が重く、、、そのまま改札に向かう気にならない。




かといってそんな時には 「パーッと一杯やって」 という気にもならない、、。




結局改札に向かう階段の前をやり過ごした私は、、、駅前交番脇にある 「喫煙コーナー」 に向かい、一服することにした。





ところがタバコをくわえると、、、「アレッ」




ポケットに入っていた筈のライターが無い、、。




どうやら店に置いてきたようだ。





幸い、近くに火を着けたばかりのタバコをくわえた 「勤め人風」 の若者がいた。




年の頃、22、3歳といったところか?



私の息子でもおかしくない年齢。




「申し訳ないけど、火を貸していただけますか?」




火をつけ終わって一服し始めたところ、腰を折られるのは煩わしい。




だから私は充分に丁寧な調子で、そう言ったつもりだった。





「、、、」




彼はチラッと私を一瞥すると、いかにも億劫そうな動作でポケットからライターを取り出し、、、他所を向いたまま、黙って私に差し出した。




「どうもありがとう」




内心 「何だよー」 とムッとしたが、、、仕方ない。




面倒を頼んだのは、こっちの方なのだ。





再び礼を言ってライターを返した私は、若者から離れた場所でタバコを吸い始めたが、、、どうにも気が紛れない。




「元々のイライラ」 にライターを借りた際の 「ムッ」 が加わって、余計に気分が沈んできたようだった。




頭の中で 「あんな態度はないよな」 とか 「近頃の若者は」 などと毒づきながら、大袈裟にも 「この国の将来は暗いな」 などと暗澹たる気持ちになった頃、、、タバコが燃え尽きた。



チェーンスモーカーよろしく、すぐに2本目のタバコを咥えたが、、、ライターは無い。



念の為にカバンの中をゴソゴソしていた時、、、誰かがチョコン、と肩のあたりを突っついた。




振り向くと、さっきの若者が立っていた。



ライターを持った手を、私の方に差し出している。




「良かったらこれ、使ってください。 俺、2本あるから」



「えっ?! あ、、、こりゃあどうも。 ありがとう!」



爽やかな笑顔を残して、、、彼は去って行った。




頭を引っ叩かれたような気がした。



さっき、そっぽを向いて見えたのは? 億劫そうに振舞って見えたのは?



みんな、、、私の 「気のせい」 だったのだ。



「最近の若者は」 どころか、、、素晴らしい青年ではないか!




「細かいことを、いちいち気にし過ぎなんだ!」



下りの電車に揺られながら、私は自分の 「弱点」 を実感していた。



だが何故か、、、気分は、すっかり晴れていた。


posted by Masa’s Pastime at 21:20 | Comment(0) | 新着情報

2013年04月03日

先日、店を訪れたある時計師志望の若者に聞かれた。



「アンティークの時計の修理だから、工具も古い方がいいんですか?」




表情を見ると、、、皮肉ではなく、本当に不思議に思っているようだった。




確かにうちで使っている工具は、ドライバーなどの消耗品を除くと、かなりの年代物が多い。




ちょっと考えてから、私はこう答えた。




「新しくて良いのがあればそっちを買いたいんだけど、無いから仕方なく古いのを使ってるんだ。」




「そうなんですか、、。」



彼はそう言うと、私の使っている古ぼけた時計旋盤を、不思議そうに眺めていた。





実際、それが本当のところなのだ。




古い工具を使っているのは 「アンティーク時計屋のこだわり」 や 「懐古趣味」 と言うわけではなくて、、、現在、時計修理用に販売されているものの質が、あまりに低いから。




もし両者の質に差がなければ、、磨耗も経年劣化もしていない 「新品」 の方が良いに決まっている。





これは以前にもお話ししたことだが、、、以前、「旋盤」 にしろ 「タガネ」 にしろ、スイス製の新品を買い込んでみたことがある。




新品だけに、特に旋盤などは各種オプションパーツも豊富で、、、あれも欲しい、これもやりたい、とフルオプションで注文したのだった。





しかし、半年後にスイスから届いた旋盤一式を使い始めて、、愕然。




並行して使っていた昔の旋盤に較べると、、、ベアリングにしろベッド(土台)にしろ、とにかく、何から何までチャチでヤワなのだ。




結局 「期待はずれの時計旋盤」 は、、、2年足らずでガタガタになり、お払い箱行き。




一方、タガネの方は 「見栄え」 こそ悪くなかったが、、、材質が、あり得ない柔かさ!




真鍮の部品を叩いただけで 「パンチ」 の先端が潰れてしまい、、、即日 「練習生用工具」 に降格したのだった、、。





もっとも、現代の工業製品が全てダメ、などと言うつもりは毛頭ない。




ご存知の通り、主要産業用の各種工作機械には、素晴らしく高性能なものがあるのだ。





要は、時代が変わった、ということ。



かつて時計と言えば 「機械式時計」 しか無かった頃。



「時計製造」 や 「時計の修理」 は花形産業で、、、アメリカやスイス、それからドイツ、イギリスなどの各工具製造メーカーは、競って良質な製品を開発していた。



これが 「斜陽産業化」 して久しい今、機械式時計はもっぱら一部の愛好家対象のものとなり、、、当然 「時計修理用工具」 の需要も激減。



つまり、「時計修理用工具」 は、、、メーカーにとって 「投資する意味の薄い分野」 となった訳だ。




実際、これら 「新品工具」 を手に取ると、、、メーカーの 「やる気の無さ」 がヒシヒシと伝わってくる。



斜陽だろうと何だろうと、、、それを生活の糧にしている者にとっては、とても使う気になれない代物。



結局のところ今でも私は、、、オーバーホールや注油を繰り返し、ロートルの工具を使い続けているのだ。

オーダーメイド 時計 東京 エングレービング

オーダーメイド 時計 東京 エングレービング

オーダーメイド 時計 東京 エングレービング


posted by Masa’s Pastime at 17:53 | Comment(0) | 新着情報