先日、店を訪れたある時計師志望の若者に聞かれた。
「アンティークの時計の修理だから、工具も古い方がいいんですか?」
表情を見ると、、、皮肉ではなく、本当に不思議に思っているようだった。
確かにうちで使っている工具は、ドライバーなどの消耗品を除くと、かなりの年代物が多い。
ちょっと考えてから、私はこう答えた。
「新しくて良いのがあればそっちを買いたいんだけど、無いから仕方なく古いのを使ってるんだ。」
「そうなんですか、、。」
彼はそう言うと、私の使っている古ぼけた時計旋盤を、不思議そうに眺めていた。
実際、それが本当のところなのだ。
古い工具を使っているのは 「アンティーク時計屋のこだわり」 や 「懐古趣味」 と言うわけではなくて、、、現在、時計修理用に販売されているものの質が、あまりに低いから。
もし両者の質に差がなければ、、磨耗も経年劣化もしていない 「新品」 の方が良いに決まっている。
これは以前にもお話ししたことだが、、、以前、「旋盤」 にしろ 「タガネ」 にしろ、スイス製の新品を買い込んでみたことがある。
新品だけに、特に旋盤などは各種オプションパーツも豊富で、、、あれも欲しい、これもやりたい、とフルオプションで注文したのだった。
しかし、半年後にスイスから届いた旋盤一式を使い始めて、、愕然。
並行して使っていた昔の旋盤に較べると、、、ベアリングにしろベッド(土台)にしろ、とにかく、何から何までチャチでヤワなのだ。
結局 「期待はずれの時計旋盤」 は、、、2年足らずでガタガタになり、お払い箱行き。
一方、タガネの方は 「見栄え」 こそ悪くなかったが、、、材質が、あり得ない柔かさ!
真鍮の部品を叩いただけで 「パンチ」 の先端が潰れてしまい、、、即日 「練習生用工具」 に降格したのだった、、。
もっとも、現代の工業製品が全てダメ、などと言うつもりは毛頭ない。
ご存知の通り、主要産業用の各種工作機械には、素晴らしく高性能なものがあるのだ。
要は、時代が変わった、ということ。
かつて時計と言えば 「機械式時計」 しか無かった頃。
「時計製造」 や 「時計の修理」 は花形産業で、、、アメリカやスイス、それからドイツ、イギリスなどの各工具製造メーカーは、競って良質な製品を開発していた。
これが 「斜陽産業化」 して久しい今、機械式時計はもっぱら一部の愛好家対象のものとなり、、、当然 「時計修理用工具」 の需要も激減。
つまり、「時計修理用工具」 は、、、メーカーにとって 「投資する意味の薄い分野」 となった訳だ。
実際、これら 「新品工具」 を手に取ると、、、メーカーの 「やる気の無さ」 がヒシヒシと伝わってくる。
斜陽だろうと何だろうと、、、それを生活の糧にしている者にとっては、とても使う気になれない代物。
結局のところ今でも私は、、、オーバーホールや注油を繰り返し、ロートルの工具を使い続けているのだ。
「アンティークの時計の修理だから、工具も古い方がいいんですか?」
表情を見ると、、、皮肉ではなく、本当に不思議に思っているようだった。
確かにうちで使っている工具は、ドライバーなどの消耗品を除くと、かなりの年代物が多い。
ちょっと考えてから、私はこう答えた。
「新しくて良いのがあればそっちを買いたいんだけど、無いから仕方なく古いのを使ってるんだ。」
「そうなんですか、、。」
彼はそう言うと、私の使っている古ぼけた時計旋盤を、不思議そうに眺めていた。
実際、それが本当のところなのだ。
古い工具を使っているのは 「アンティーク時計屋のこだわり」 や 「懐古趣味」 と言うわけではなくて、、、現在、時計修理用に販売されているものの質が、あまりに低いから。
もし両者の質に差がなければ、、磨耗も経年劣化もしていない 「新品」 の方が良いに決まっている。
これは以前にもお話ししたことだが、、、以前、「旋盤」 にしろ 「タガネ」 にしろ、スイス製の新品を買い込んでみたことがある。
新品だけに、特に旋盤などは各種オプションパーツも豊富で、、、あれも欲しい、これもやりたい、とフルオプションで注文したのだった。
しかし、半年後にスイスから届いた旋盤一式を使い始めて、、愕然。
並行して使っていた昔の旋盤に較べると、、、ベアリングにしろベッド(土台)にしろ、とにかく、何から何までチャチでヤワなのだ。
結局 「期待はずれの時計旋盤」 は、、、2年足らずでガタガタになり、お払い箱行き。
一方、タガネの方は 「見栄え」 こそ悪くなかったが、、、材質が、あり得ない柔かさ!
真鍮の部品を叩いただけで 「パンチ」 の先端が潰れてしまい、、、即日 「練習生用工具」 に降格したのだった、、。
もっとも、現代の工業製品が全てダメ、などと言うつもりは毛頭ない。
ご存知の通り、主要産業用の各種工作機械には、素晴らしく高性能なものがあるのだ。
要は、時代が変わった、ということ。
かつて時計と言えば 「機械式時計」 しか無かった頃。
「時計製造」 や 「時計の修理」 は花形産業で、、、アメリカやスイス、それからドイツ、イギリスなどの各工具製造メーカーは、競って良質な製品を開発していた。
これが 「斜陽産業化」 して久しい今、機械式時計はもっぱら一部の愛好家対象のものとなり、、、当然 「時計修理用工具」 の需要も激減。
つまり、「時計修理用工具」 は、、、メーカーにとって 「投資する意味の薄い分野」 となった訳だ。
実際、これら 「新品工具」 を手に取ると、、、メーカーの 「やる気の無さ」 がヒシヒシと伝わってくる。
斜陽だろうと何だろうと、、、それを生活の糧にしている者にとっては、とても使う気になれない代物。
結局のところ今でも私は、、、オーバーホールや注油を繰り返し、ロートルの工具を使い続けているのだ。