2012年06月29日

さてさて、数日間苦しんだ副鼻腔炎もなんとか治まってきた昨夜、、、昔の仲間から、レバ刺しパーティーの誘いを受けた。




来月より飲食店での牛レバーの生食が法律上禁止されるのはご存知の通りだが、、、これが合法的にレバ刺しを食べる 「最後のチャンス」 とばかりに昔の仲間が集まるというのだ。





もっとも、レバ刺しに関しては既に自粛している店が大半だから、、、どこに行っても食べられる訳ではない。




しかしうまいことに、武蔵小金井の知り合いの行き着けの店では、まだ普通に出しているという。




という訳で、夜10時に有志が集まり、身体にいいような悪いような食事会を催したのだったが、、。





9時過ぎ、仕事を終えて店を出た。



珍しく、うちの連中も 「行きたい」 と言う。



そんな訳で、さっそく先に行っている仲間に電話を入れると、、、なんと 「一テーブルに一皿限定になってるよー」




しかも、何処かにメールしていたスタッフの辻本によると、、、、別の店で同じようなことをやっている奴の知り合いも、同じ憂き目にあっているらしい。





どうやら、世間には 「レバ刺しファン」 が案外多く、品物が不足しているらしい。




元々 「メニューにあれば必ず頼む」 レベルの私のような人間から、「かなりに好き」 な人、それから 「目の前にあれば食べるかな」 くらいの人までが、、、、 「二度と食べられない」 ということで、一斉に押し掛けてしまった訳か、、。





とにもかくにも、店に着いた。



しかし、「ごめんネー、もうレバ刺し終わっちゃったー」 と美人女将の悲しい一言。



なんと 「一テーブルに一皿限定」 どころか、、、、既に 「レバ刺し」 は売り切れていたのだ、、。




他にも美味しいメニューはいくらでもあるのだが、、、やはり残念。



「人間、(ない)となると途端に欲しくなるもんだなー」




かつてネットオークションで 「吉野家のレトルト牛丼」 にプレミアが付いたことを思い出した。



結局ゆうべの私達は、代わり(?)の 「馬刺し」 に心を癒されながら、、、、「レバ刺し」 に永遠の別れを告げたのだった。


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2012年06月27日

日曜日の帰り、翌日の天気予報を聞いた。



「東の風強く、一日中雨」



「こりゃ駄目か、、」



海に行けない私は、、、憂さ晴らしにハモニカ横丁の 「田楽山」 に入った。





「田楽山」 はカウンターだけの小さな居酒屋だが、、、凄まじい数のメニュー(どれも美味しい)と家庭的な雰囲気、それから良心的な勘定の、知る人ぞ知る人気店。




全部で10人がやっと、というカウンターだから、週末の夜などはまず入れないが、、、さすがに日曜の夜ということもあって空いていた。




カウンターどん詰まりの定位置に腰掛け、、、まずは生ビール。



夕食も兼ねた 「馬鹿ウマ豆腐」 と 「豚肉のしょうが焼き」 を頼み、、、、焼酎のロックに突入。



ところが、、、何か調子が出ない。



なんとも身体がだるくて、、、ちょっと眩暈もする。



1杯目の焼酎が中々減らないばかりか、、、珍しく、水を足してしまったのだ。




そう言えば、昨日くらいからちょっと喉もヒリヒリして、タバコが旨くなかったような、、。



それでも、飲んでるうちに直るだろ、としばらくは水割りをチビチビやりながらテレビを見ていたが、、、、そのうち頭痛がしてきて、いよいよギブアップ。



「あれっ、もう帰っちゃうのー?」



おかみさんにビックリされながら、、、早々にお勘定して、表に出た。




ヨロヨロと電車に乗って携帯を見た。



まだ調子は悪かったが、、、時間はまだ早かったのだ。



「どうせ明日海にも行けないし、、。」



何となくつまらなくて、、、自宅の一つ手前、国分寺で電車を降りた。




どっか面白そうな店はないかなー。



相変わらず頭は痛かったが眩暈は治まっていたから、、、しばらくフラフラと歩き回って、あちこちの店を覗く。



「ちょっと良さげな店」 は、どこも満員。



微妙な店は、、、あまりにガラガラ。



どっちにしても入る気になれないし、、、やっぱりだるくてシンドイ。



結局、そのままどこにも行かずにうちに帰ると、、、何故か、急に症状が悪化してきた。




こりゃー恒例の?夏風邪をひいたかな?



私はもう何年も冬には風を引かないのに、、、毎年と言っていいほど、夏風邪にやられるのだ。



風呂にも入らずに寝床に潜り込むが、、、、頭だけじゃなくて、顔面、それも左半分だけが痛い。



そう言えば、リンパ腺のあたりも、、、左側だけが腫れていてグリグリするし。




結局、翌日月曜はほぼ寝たきりで休んだが、、、変わりなし。



火曜日、残った仕事を片付けに店に来たが、、、「効き目」 の左目が痛くて仕事にならない。




で、「医者嫌い」 の私も遂に諦めて、今朝病院に行くと、、、、「風邪ではない」 と言う。



先生の診断は、、、「副鼻腔炎」



何らかの原因によって、頭蓋骨にある 「副鼻腔」 が炎症を起こしているという。




そう言えば、、、確かに 「左目の下あたり」 を押すと痛かったっけ。



夏風邪などと 「素人診断」 せずに、早く診てもらえば良かった。



5日分の薬を貰って店に向かった私は、、、つくづくそう思い知ったのだ。

posted by Masa’s Pastime at 14:19 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月24日

今朝、納豆をかき回しながら朝刊を読んでいると、ちょっと風変わりな 「産業スパイ」 のニュースが目に入った。



既に読んだ方も多いと思うが、、、何でも、韓国の大手鉄鋼メーカーの社員が、自社の鋼板製造技術を中国のメーカーに漏らし、訴えられたらしい。




困ったことだが、それだけならよくある話し。



しかし、この容疑者は取り調べに対し 「その製造技術は元々うちが新日鉄から盗んだものなのだから、会社に訴えられる謂れはない」 と主張している、という。



事実、この特殊な鋼板製造技術は元々「新日鉄」 のものだったのだが、、、いつしか産業スパイによって韓国のメーカーに伝わり、その後別の産業スパイであるこの容疑者によって中国の鋼板メーカーに持ち出された、ということになる。



つまり、この容疑者からすると 「泥棒に泥棒呼ばわりされる憶えはない」 という訳だ。 




確かに 「一理」 はある。



これを時計屋の話しに例えると、、、「盗んできた時計が盗られた」 と言って、最初の泥棒が別の泥棒に対して訴えを起こすのと同じになる。



いずれにしても、部外者からすると何ともバカバカしい話しのようだが、、、「真の被害者」 である新日鉄にとっては、極めて重大な話しだ。



なにしろ新日鉄の談話によると、、、この10年ほど、件の韓国、中国の競合メーカーの鋼板製造技術がありえないほどの進歩を遂げ、不思議に思っていたところだった、というのだから。




「産業スパイ」 というと、昨今ではもっぱら 「IT」 関連の業界でよく取り沙汰されるが、この業界の場合、技術の進歩・革新、それから市場での流行のスピードが早すぎて、、、、盗んだ方も盗まれた方もそのノウハウはすぐに廃れてしまう。



だから、訴訟が起こされるのは稀なようだ。



これに対して、、「流行」 に無縁な鉄鋼業界の方は、一旦革新的な技術の開発に成功すれば、その恩恵はかなり長続きする筈のものであるから、、、、盗まれたことによる損害は非常に大きい、という訳だ。



確か新日鉄では 「一千億円」 の損害賠償を求める、ということだったが、、、この裁判の行方は新日鉄にとってのみならず、 「技術が命」 の日本の産業界全体にとって、注目のものになるようだ。




ご存知の通り、世の中には 「目に見えるもの」 と 「見えないもの」 がある。



目に見えるものは、、、お金や金塊、土地や建物、その他時計や宝石、身の回りのもの全て。



人様の持っているこれらを無断で拝借すれば、たちどころに 「御用」 となることは、子供でも知っている。



これが 「目に見えないもの」 だとどうか?



目に見えないものは、、、知識や技術。



分りやすいところで、医師や弁護士の知識や技術、、、教師に学者や研究者、作家、占い師も同様。



それから、お茶の間でお馴染みの歌手や漫才師、アナウンサーやスポーツ選手なども技術師と言えるし、先述した 「特殊な鋼板技術」 も、目には見えない技術そのものだ。  




「目に見えないもの」 は、注意が必要。



例えば、私がある弁護士の事務所を訪ね、一時間もの間、法律に関して 「自分の知らないこと」 を聞きまくった挙句 「どうもありがとうございました」 と立ち去れば、、、これは 「無銭飲食」 に等しい。



間違いなく等しいのだが、、、目に見えないものだけに、何故か 「蕎麦屋で掛け蕎麦を食べて金を払わずに立ち去る」 よりは罪が軽いような 「錯覚」 に陥ってしまう。



実際、そんなことは身の回りに溢れていると思う。





話しは逸れるが、いつだか長女に聞かれたことがあった。



「父ちゃん、紙芝居屋さんって知ってる?」



「ああ、知ってるよ。 父ちゃんが子供の頃にはもういなかったけど、、、その少し前まではあったんだ。」



「今日、学校で先生に聞いたんだ。 屋台みたいのでやってきて、紙芝居を見せてくれるんでしょ。」



「うん、そうだよ。 それで、お菓子とか飴とかも売ってるんだ」



「へー。なんでお菓子とかも売ってんの?」



「何でかって言うと、紙芝居はタダだから、、。」



「???分んない、、。」



「子供達に紙芝居を見せても、おじさんはお金を下さい、って言わないんだ。 だけどおじさんも仕事でやっている以上、本当はタダじゃ困る。 だから紙芝居でお金を取らなくても、その分お菓子や飴を買ってもらってお金を集めるようにしてるんだ。」



「ふーん、そうなんだ。 紙芝居屋さんて、いい人なのかと思ったのに、、。」



「いい人だよ。 子供達が喜ぶように頑張ってるんだから。」



「でも本当はお金が目的なんでしょ?」



「いいか。 目的がお金であってもそうでなくても、、仕事をする以上、お金は絶対に必要なんだ。 父ちゃんが紙芝居屋さんだったとして、何もお金を集めないで帰って来たらどうなると思う? MKもMMもご飯を食べられなくなっちゃうし、学校にも行けなくなっちゃうだろ?」



「そっかー。 それはイヤだ。」



「だろ? 父ちゃんだって時計を直せばお金を貰うし、学校の先生だってそうだし、仕事をしたらお金を貰うのは皆同じで、悪いことなんかじゃないんだ。 嘘を付いて人を騙したりしない限りはな。」



「それは分った。 でも、、、紙芝居を見ても、お菓子を買わなかったらどうするの?」




おっ、いよいよ来たな、と私は思った。



そこが一番肝心のところなのだ。




「一度や二度はそれでもいいんだ。 本当にお金を持っていない子もいるんだし。」



「ずーっといつもだったら? 」



「そんな時は、きっとその子のお母さんやお兄ちゃんお姉ちゃんが教えてくれるよ。 たまにはお菓子買わなきゃいけないよ。 おじさん、一生懸命紙芝居してくれてるんだから、ってな。」



「ふーん。 それなら大丈夫だね。」



まだ小学校低学年だった長女が本当に分ったのかどうかは定かでなかったが、、、今はこんなところでいいかな、と私は思った。




しかし考えてみれば、、、、読み聞かせ、という 「目に見えないもの」 を、お菓子や飴という 「目に見えるもの」 に置き換えるこの 「紙芝居屋」 という商売は、、、実にうまく出来た教育プログラムと言える。



世の中に出たばかりで、難しい社会の慣わしを完全に理解するには早い子供達にとって、、、大人になるまでの 「補助付きの自転車」 のような働きをしていたのではないか。




話しは戻って、件の 「特殊鋼板技術」



その開発には、大変な努力、時間、そしてお金が必要だったはずだ。



「目に見えない」 こういう 「知的財産」 を、平気で盗み出し、真似をする。



そういうことが横行している社会において、今最も必要なのは、、、子供だけではなく、大人の教育・啓蒙だろう。




「目に見えないものは、タダじゃないんだよ」



ずっと昔に、、、紙芝居屋のおじさんがそう教えていたように。 



posted by Masa’s Pastime at 19:15 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月22日

このブログで何度か途中経過をご紹介していた 「新型カスタム腕時計」 が、遂に完成した。




ケースの本格的な試作を始めたのは今年の始めくらいだったように記憶しているから、、、「試作の繰り返し」 や 「サファイアの調達」 、それから追加的に必要になった 「機材の調達」 等に、半年を費やしたことになる。




新しいことに手を付け始めると、何だかんだと新たなものが必要になってくるものだが、、、今回、改めてそれを実感することとなった。





さてさて、今回新たにラインナップした 「新型カスタム腕時計」 は2タイプ。




アメリカ規格の 「12サイズ」 及び 「14サイズ」 だ。




ケースの材質は、0サイズ同様の 「シルバーケース」 に加え、新たに 「ステンレスケース」 もラインナップした。




ステンレスケースの場合、市販品の 「金属ブレス」 が装着可能で、、、レザーバンドとはまたちょっと違った雰囲気が楽しめるのだ。





ケースの形状は、基本的に0サイズのカスタム腕時計のスタイルを受け継ぐもの。



しかし 「絶対的なサイズの違い」 から、ラグの長さや全体の厚みのバランスは、少々異なる。




これは 「オーパーサイズでありながら、極力手首からはみ出さない時計」 をイメージしたためで、、、仮に0サイズと全く同じ形状でそのまま大きくすると、ラグが手首から飛び出すし、全体に無駄にぶ厚くなってしまう。



これは試作を繰り返す中で、最も工夫が必要だった部分だ。





記念すべき第一号機は、14サイズのステンレスケースで 「1912年製、ハミルトン920」 搭載機。




「23石、ジュエルドモーターバレル」 の言わずと知れた高級機で、、、一般の腕時計では有り得ない贅沢な仕様だ。




ダイアルは、辻本の手によるギロシュダイアル。


もちろん 「ギロシュパターン」 の部分はローズエンジンを使うが、「ロゴや数字・インデックス」 は、全て手彫り。



実に不経済なことに、このダイアルの製作自体に 「1週間」 が消えるのだが、、、、傍で作業風景をご覧になった方には 「こりゃ、仕方ないよねー」 と納得していただけるものだ。  





さて、この新型カスタム腕時計、従来の0サイズ同様、お持ちの時計をケーシングすることも想定されている。




12サイズ、もしくは14サイズの懐中時計をお持ちので 「腕時計にしてみようかな」 という方、詳細はホームページをご覧ください。




ちなみに0サイズ同様、ムーブメントには一切改造を加える必要がないから、、、いつでも 「元の姿」 に戻すことが可能。




腕時計にしたからといって、将来的に懐中時計として使えなくなってしまう訳ではないので、ご安心を。




最後に、、、ケースの形状を 「自分の好み」 で製作して欲しい、 或いは 「金」 「プラチナ」 等、違う金属で作ったものが欲しい、、、「文字盤の仕様」 や 「ムーブメントの選択」 も含め、全て自分なりのこだわりの一品に仕立てたい。



そんな方がいらしゃったら、是非ご相談下さい。



現実的に可能なものであれば、、、どんなものでもお作り致します。




ではでは、、今後とも何卒よろしくお願い致します。


14サイズ 大型腕時計 東京 ギョーシェ

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大型腕時計 東京

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追記  



長引く 「銀地金」 の高値の影響により この度従来の 「0サイズカスタム腕時計」 のケーシング費用を、変更させていたくこととなりました。

     

ご迷惑をお掛けして誠に申し訳けございませんが、何卒ご了承下さいませ。



posted by Masa’s Pastime at 17:03 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月20日

昨夜の台風は凄かった。



久し振りに、関東をほぼ直撃。



こんな梅雨時に日本列島を縦断する台風は、、、何年も記憶にない。




前日、いつものように伊東で釣りをしていた時は、稀に見る 「ベタ凪」



微かに 「ウネリ」 はあったものの、、、湖のような穏やかな海だったのだ。




それが、昨日の夕方くらいから急に風雨が強まりだし、、、晩飯時には 「ザーザー・ピューピュー」



我が家は団地の8階だから、尚更風が強い。



子供達も怖がるが、こんな時何が困るかというと、、、、実は、タバコが吸えないのが一番困るのだ。




引っ越した当時は、換気扇の下で吸っていた。



しかし、次女が生まれた頃からは一切禁止。



いつもベランダの片隅でコソコソと 「蛍族」 しているのだ。




食事後にタバコが吸いたくなるのは、天気に関係ない。



ということで、昨夜も風や雨が吹き込まないように、素早くサッシを開閉し、べランダへ。



「ピューピュー」 は、いつしか 「ゴーゴー」 になっていて、、、雨は容赦なく吹き付ける。



ベランダに背を向け、サッシに顔を付けるようにしてかがみ込む。



背中や後頭部は直にビシャビシャになるが、、、加えたタバコは両手で囲み、なんとか護る、。



それでも隙間から風が入ってきて、、、火が付かない。




ビショビショになりながら何度も繰り返した挙句、、、、やっと火が付いた。



しかし、吸えない!



いや、いくらかは吸えている、、、吸えてはいるが、タバコが濡れて湿気ってしまっている上に、風が強すぎて煙が出ない(見えない)のだ。



何度か吹かしてから、諦めて振り返ると、、、サッシの向こうで、次女が馬鹿にしたように笑っていた。




「そこまでして吸いたいか?」 



吸わない方は、間違いなくそう思うだろう。



でも、愛煙家は、、、吸いたいものなのだ。




行ってしまった台風4号の下には、、、早くも5号が控えている。



近づいてくるのは、今週末から来週初めか、、?




そうなると、また困る。



釣りに行けなくなるのも困るが、、。



しかし、最も旨い 「食後の一服」 が出来なくなるのは、もっと困るのだ。


posted by Masa’s Pastime at 20:37 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月17日

今朝ベッドから起きあがると、居間で娘たちが騒いでいた。




毎週楽しみにしているテレビ番組(プリキュア)がやっていない、と言う。




どうでもいいが、カミさんにみてもらったところでは、、、どうやらゴルフの 「全米オープン」 の中継のせいで予定が変ったようだ。





「もー、何でゴルフー!?」



腹立たしげに、リモコンをカチャカチャやる次女。




しかしちょっと映った綺麗なグリーンの映像に誘われた私は、「あっ、ちょっと見せて!」




「有り得ない精度のショット」 を繰り出すトッププレイヤーの技に釘付けになりながら、、、唯一興味を持った長女と一緒に、出勤時間ギリギリまでゴルフ観戦となったのだ。





二十代の半ば、、、私には毎日ゴルフ漬けだった頃があった。




「ゴルフ漬け」などというとどこかのお坊ちゃまのようだが、、、勿論そうではない。




ご存知の方も多いだろうが、アメリカでのゴルフは 「大変手頃な遊び」 なのだ。





あの頃、休日に半日楽しんで、12ドル程度。




平日、仕事や学校の後に行く夕方の 「トゥワイライト」なら、5ドル程度だった。




まあ1ドルが200円以上していた頃の話しにしても、、、「ボーリング」 より安い感じか。





休日には仲間と一緒に行くことも多かったが、基本的にはバッグを担いで、1人でフラッと行く。




そうすると、他にも私と同じように1人で来ているのがいるし、、、場合によっては三人で来ているグループに混ぜてもらうことも出来る。




要は 「4人一組」 になれば良い。



雀荘の宣伝で 「1人でも遊べます」 というのがあるが、、まさにあのシステムなのだ。




私が柄にも合わないゴルフなどに夢中になったのは、、、この 「1人でも行ける」 こと 「知らない連中と回るのが面白かった」 ことが大いにあったと思う。





偶然一緒に回ることになる相手には、当然色々な人がいる。



ヨボヨボのお爺ちゃん、どっかの会社の重役風の紳士から、、、、中学生くらいの子供まで。



それこそ 「パープレイ」 で回ってしまうようなプロ級の人から、、、「モグラ叩き」 をやっているような初心者まで。



しかし、それもまた面白いのだ。




それがどんな人でも、先ずは 「よろしく」 と握手、自己紹介から。



1番ホールのTショットを打ち終えると、一緒にフェアウエイを歩き、世間話し。



コースによっては、カートに乗って移動することもあったが、、、余計なお金が掛かるから大抵は歩いていた。



1番ホールのパットを終え、2番ホールのT-ショットを打つ頃には、「Good shot, MASA !」 とか 「Thanks, JACK !」 などという友達感覚に。



このあたりは、エレベーターの中で乗り合わせた他人とでも話しが盛り上がるアメリカ人の気質に加え、、、スポーツの持った不思議な魅力があるのかもしれない。




大概の場合、18番ホールのパッティングを終える頃には、すっかり打ち解け、昔から知っているような4人の仲間の出来上がり。



お爺ちゃんも、重役も、、、中学生の少年も 「Nice game, Masa!」 とか 「Pleasure playing with you, Jack !」 などと握手を交わし、、、上手くても下手くそでもお互いの健闘?を称えあい、、、、お別れ。



「19番ホールで一杯やろうぜ!」 などということは意外と少なく、、、大体は 「またな!」 という感じで皆帰ってゆく。



そのさっぱりした感じも、また心地良かったのだ。




帰国して数年後。



時計屋になってから、昔の仲間やオヤジと何度か行ってみた。



たしかにゴルフは面白い。



それはどこでも変らなかったのだ。



しかし、、、今ひとつスタイルに馴染めなかった。




ティーショットを森の中に打ち込むと、、、猛烈な勢いで走ってゆく 「キャディさん」 がいた。



「もういいですよ」 と言っても一生懸命かがみこんで探してくれている。



こうなると、打ち込んだ私の方が恐縮してしまう。




「クラブの選定」 に、厳しく指示を出すキャディさんもいた。



残り150ヤード、、、ちょっと下り坂。



6番アイアンで打ちたいところだけど、、、風は逆風。



「やっぱり5番アイアンで軽めに」 と5番を取り出すと、、、、「お客さんだと6番ですよ。 5番じゃグリーンオーバーします」



「うん。でも軽めに打ちますから」 と言うと、、、怪訝な顔をしている。



軽めに打ったつもりの私の一打は、彼女の言う通りグリーンの奥にオーバーし、「ほらねー」 となるのかな、と思って彼女を見ると、、、ムッとしたように黙っている。



ド素人の私の独断が、彼女のプロとしてのプライドを傷つけた、ということになるのだろうが、、、私にとっては 「自分で考える過程」 自体がゴルフの楽しみだから、そこを取り上げられては困るのだ。



結局その日、最後まで彼女の顔が晴れることはなく、、、皆にも余計な気を遣わせてしまった。




それ以来、ゴルフは止めてしまっていて、、、、最後にやったのは10年くらい前。



買い付け先のフロリダで、2年前に亡くなった親友のボブさんと、その兄弟の4人で。



時計の買い付けも無事終わり、リラックスした雰囲気の中での久し振りのゴルフで、、、素晴らしく綺麗なコースだった。




1番ティー、1番手はボブさん。



次の組もその次の組の連中も、皆が見守る静寂の中、、、、目にも留まらぬ勢いでスウィングしたボブさんは、、、、思いっきり空振り!



ティーの上には、、、置いたままのボールが微動だにせず座っている。



あちこちから、「ククク、、」 という笑いをかみ殺す声。



彼の兄がすかさず一言。



「なあ、ボブ。 どうやったらあんなに鋭い”素振り”が出来んだか、後でゆっくり教えてくれよ!」



トマトのように真っ赤になったボブさんは、目にも止まらぬ早さで打ち直し、、これは茂みの中へ。



私も危うく大笑いしてしまうところだったが、、、、彼のおかげで、皆がリラックス出来た。




池に打ち込んだボールを取りに行った私に 「マサ、ワニがいるからダメだ!」 とボブさんの真剣な声。



本気にしなかった私が、鉢合わせした小さなワニに腰を抜かすと、、、皆大笑い。



皆プレイ自体は極めて真剣にやっているのだが、合間には冗談が絶えない。



最終18番ホールを終えた時には、笑い過ぎてヘトヘトになる。



あんなゴルフなら、、、、いつでもまたやりたいと思っているのだ。


posted by Masa’s Pastime at 15:43 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月15日

明後日の日曜日は 「父の日」



ということで、、、今日は 「脱線ノート」 から脱線して?、営業トークを。




毎年この時期になると、「父の日のプレゼントにアンティークの懐中時計を」 という方が何人かいらっしゃる。



これは、大切な父親にはうってつけのプレゼントだから。




何故か?


それは、、、いつしか廃棄処分になるものと違って、アンティークの時計はいつまででも 「生き続ける」 ものだから。



これが例えば、誰でも知っている 「某人気メーカーの新品の機械式時計」 だったりすると、、、、大体40年足らずでメーカーから修理の受け付けを断られる。



同じメーカーの時計でも、今から少なくとも50年以上前に製造された時計なら、メーカー以外で修理が可能な仕様のものが多いが、、、、近年作られているものではそうはいかない。



こういう近年の時計は、ごく一部の消耗部品だけを製作・交換して直せるようには設計されていなくて、、、、「テンプ一式」 とか 「ローター周り一式」 というように、大々的な主要部品をそっくり交換して初めて修理が可能になる仕様なのだ。




したがって、、、プレゼントを受け取った30代のお父さんが70を過ぎた頃 「この時計はもうお預かりしていません」 とあっさり断られるはめになる。



せっかく娘や息子から贈られ、ずっと大切にしてきた時計なのに、、、という、実に悲しいことになってしまうのだ。




と、いうことで、、、アンティークの時計のお奨め。



お父さんがコレクターでもない限り、マニアックで特別高価な時計は必要ないのだ。



丈夫で長持ち、それでいて綺麗なアンティークウォッチはたくさんある。




「懐中時計はどうも、、」 という方には 「カスタム腕時計」 がお奨め。



水や埃を気にせずに、ずっと使える腕時計だから。




一日一回 「ジコジコジコ」 とゼンマイを巻き上げる度に、愛着が湧いてくる時計。



いつか 「もう直りません」 と言われて、ガッカリすることのない時計。



「いつまでも元気でいてね」 という気持ちの込もった。



そんな時計はいかがでしょうか ?!

懐中時計 東京 腕時計

AGASSIZ
http://www.antique-pastime.com/item/pocketwatch/euro/8/1439.html 


懐中時計 東京 腕時計

Hampden DUEBER
http://www.antique-pastime.com/item/pocketwatch/usa/6/1492.html


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Elgin カスタム腕時計
http://www.antique-pastime.com/item/wristwatch/custom/3/1392.html

懐中時計 東京 腕時計

Waltham カスタム腕時計
http://www.antique-pastime.com/item/wristwatch/custom/1/1658.html
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2012年06月13日

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先週仕上げた2つの懐中時計が、引き出しの中で 「精度」 を張り合っている。




両方とも、19世紀初頭のイギリス製。




見た目にも非常に似通ったもので、いずれも 「クロノメーター」 と呼ばれる、高精度型の懐中時計だ。





念のために説明すると、、、、ここで言う 「クロノメーターの時計」 は、一般に言う 「ロレックスのクロノメーター」 とか 「オメガのクロノメーター」 などとは根本的に違うもの。




後者は、「スイスクロノメーター検定協会の設定する基準の精度を有し、認定を受けた時計」 という意味で、通常ムーブメントの構造は 「一般的なアンクル式」 だ。




ちなみにその基準を簡単に書くと、「15日間連続のテストにおいて、5姿勢(異なる時計の向き)、3通りの設定温度下で、日差-4秒(遅れ)〜+6秒(進み)の範囲に入る」 というもの。




言い換えれば 「プラス・マイナス合計で1日に最大10秒近くの誤差」 がある時計も認定される、ということになる。




これだと、100年以上経ったアンティークウォッチでも高精度型のものをレストア・調整すれば充分クリアしてしまうし、、、通常検定に出す時計が 「全くの新品」 であることを考えると、ハッキリ言ってかなり緩い基準だ。




これに対し、前者の懐中時計は 「クロノメーター脱進機」 と呼ばれる全く別構造のムーブメントを搭載したもので、協会の認定云々とは無関係。




しかし、その構造上 「アンクル式」 の時計よりも遥かにシビアーな部品精度が必要な、「本当の意味でのクロノメーター」 なのだ。 





18世紀、大航海時代のイギリスにおいて、、、、議会の大きな悩みの種は、航海における船の 「航行精度」 だった。




携帯電話にまで 「GPS」 が搭載される現代では考えられないことだが、当時は 「天測」 によって海上の自船の位置を測って航海していて、、、、これには 「正確な時間・正確な時計」 が不可欠になる。




そんな訳で、、、イギリス議会は1714年に 「5ヶ月で1分以内の精度の時計を作った者」 に対して 「2万ポンドの賞金を与える」 と発表し、「高精度な時計」 の開発を後押しした。




ここに、ヨークシャー州出身の 「ジョン・ハリソン」 が登場し、いくつかの時計を製作。




庶民の出身ということで賞金の一部しか受け取れない等の紆余曲折がありながら、、、、1773年、遂に賞金の全てを受け取ることになったのだが、その時の実験における彼の時計の精度は、「日差1/14秒」!!





何とも 「凄まじい精度」 を達成していたことになる。





これより9年ほど後の1782年、イギリスの 「John Arnold」 と 「Thomas Earnshaw」 によって発明された 「ディテント クロノメーター」 により、クロノメーターは徐々に製造が本格化してゆく。




今、私の引き出しの中で 「精度競争」 をしている2つも、それから間もない頃に作られたものだ。





「ジャッ、ジャッ、ジャッ」 




一般の機械式時計とは明らかに異なる 「クロノメーター」 独特の振動。




0.4秒毎にステップする、秒針の刻み。





今朝、電波時計に合わせた秒針が、、、10時間後の今なお、2つともピタリと揃って動いている。




「俺はまだまだ老いぼれてないぞ!」




「こっちもまだまだ若いものには負けんよ!」




同じ引き出しの中、、、100歳も年の離れた 「若いアンティーク時計達」 の中に混じって大健闘。




「2つ合わせて400歳」 にもなる時計達は、、、そんな風に張り合っているように見えるのだ。

posted by Masa’s Pastime at 19:54 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月10日

関東地方の梅雨入りが発表されて間もないが、今日は朝から久しぶりにカラっと晴れた気持ちのいい日になった。




夏好きの私にとっては、梅雨明け後の晴天続きが待ち遠しい季節。



だが、こんなちょっとした 「梅雨の晴れ間」 もまたいいもんだ。





これを人間に例えると、、、いつも寡黙で不機嫌そうにしている人が、珍しくニコっとした感じか。




この場合、普段が沈みがちな人だけに、いつもニコニコしている明るい人の笑顔よりも強く印象に残る。



話しは逸れるが、、、総じてこういう男に女性陣は弱いようだ。





遠い昔、ロサンゼルス郊外の北ハリウッドでのこと。



休日、給料を受け取りに行ったついでにバイト先のレストランバーで飲んでいると、、、顔見知りの 「遊び人風の老紳士」 が、私に話し掛けてきた。


年の頃70は近い。



痩身の身体に綺麗な白髪。



シルクっぽい綺麗なシャツに、派手なネッカチーフなんかしていて、、、アメリカ人としては、かなりお洒落な人だった。




「君は女性に興味があるのか?」



「!?、、、イ、イエス。 そりゃ、もう、、。」



一瞬、「あっちの世界の人」 か? と戸惑う私の不安を見透かし、、、「安心しろ。俺はゲイじゃない」 とその人。



「じゃあ、女性にモテたいんだろう?」

 

「ウン。 モテたい、モテたい!!」 安心した私は、二つ返事。 



「よし。 それじゃ教えよう。」



そんな風にして、その人の長い講釈は始まった。




「君は若くて元気だ。 それに人柄も悪くない。 まあ、それはそれで結構だが、、、しかし女性にモテたかったら、もう少し静かにしていた方がいい」


その人曰わく、寡黙な男は女性からすると 「何かを秘めている」 ように見えるのだという。


私のようにペラペラと騒々しくしていると、、、薄っぺらな男に見えて損をする、と。




「実際には何も秘めていなくていいのだ」 と言う。



「給料日まであと何日あったっけな?」 とか 「明日の朝飯は目玉焼きにするか、それともスクランブルにするか?」 などと考えているだけで。



そうやって、ただ黙ってカウンターで静かに飲んでいればいい。



そんな男に出くわした女性は 「この人は私に何も話し掛けてこないけど、、、一体何を考えているんだろう?」 



自分の容姿に自信のある、ブロンド美人に限って、「こんなに綺麗な私に興味を示さないなんて、何かあるに違いない」 と、思う。



「もしかしたら、ゲイなのかしら?」 とか 「きっと何か悲しい過去があって、女性不信に陥ってるのかも」 などとと想像を巡らし、、、、、気が付けば 「その男の正体」 に興味を持ってしまうのだ、と言うのだ。




だから、話し掛けたくても、グッと我慢。



バーテンやウエイトレスの子にちょっかいを出したりもせず、、、ひたすら静かに飲み続ける。



そして、ここぞという 「決定打」 は、女性の視線を感じた瞬間。



この瞬間を逸さず、、、「フッ」 と、少しだけ 「淋しそうに微笑みかける」 のだそうだ。



これでその女性は 「あっ!」 と不意打ちを食らい、、、一気に距離が



その人曰く、この 「淋しそうに」 というところが最も肝心らしく、、、決して明るく微笑みかけてはいけない。



ましてや、ヤニだらけの歯など見せて 「エヘへ」 などと下卑た笑いを見せようもんなら、、、それまでの「我慢の黙り」 が台無しになるのだ、と。



その晩、師匠の教えに若き日の私はすっかり感心し、 「ここに極意を得たり」 と思ったのである。




それから、かれこれ四半世紀が経った。



その間、師匠の教えを試す機会はいくらもあったが、、、、結果は散々。



大体、おしゃべりな私は、じっと黙っていることが苦痛で、、、どうしてもヘラヘラしてしまう。



それでも何度かは我慢し続け、「高倉健」 のように苦虫を噛み潰したこともあったのだが、、、、肝心の 女性の 「視線」 を感じることもなく、気が付けばいなくなっていたり、「待ったー? ううん、大丈夫」 などと白馬に乗った騎士が現れたりして、チャンチャン、となったこともあった。




今になってみれば、「梅雨の晴れ間」 的な師匠の戦略は、、、、そもそも私向きではなかったのだ、と自分なりに決着させている。



梅雨明けまで、あと一月余り。



朝からミンミン、ジージーとセミの鳴く、馬鹿っ晴れの季節が待ち遠しい。


posted by Masa’s Pastime at 15:39 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月08日

懐中時計 東京 腕時計

懐中時計 東京 腕時計

懐中時計 東京 腕時計

懐中時計 東京 腕時計

懐中時計 東京 腕時計



このところ、フュジーの付いた時計の修理が続いている。



「アンティークウォッチファン」 でない方のためにもう少し砕いて言えば、、、鎖引きの時計、、、いや、チェーンドライブの時計、、、ウーン、、どうやっても解り易くならない。



それでも敢えて説明すると、、、「巻き上げたゼンマイの力を歯車に均等に伝えるため、自転車の変速機のようなギアーのようなもの(フュジー)を使っている時計」 か、、。




この 「チェーン駆動の時計」 は、おおよそ17世紀末頃から出現するが、、、20世紀初頭には船舶用の一部時計を除いて姿を消す。



ちなみに 「フュジー」 自体はこれよりもっと前から使用されていたようだが、、、その頃駆動に使われていたのは 「チェーン」 ではなくて、俗に言う 「キャットガット(猫の腸)」 なのだ。



「えーっ、猫の腸?! 可哀想!」 と驚くなかれ。



実際に使われていたのは、もっぱら 「羊の腸」 だったようだ。



まあ、猫でも羊でも可哀想なのは一緒だが、それは置いておいて、、、今日は、このチェーンの話し。




拡大して良く見ると、まさに自転車のと同じ 「チェーン」 そのものだが、、、、極めて細い。



爪楊枝と並べて写真を撮ってみたから、ご参考下さい。



一つ一つのコマは 「猿の目の周り」 のような、というか 「ひょうたん」 のような形をしていて、、、それぞれに穴が開けられ、リベットで留められている。



ちなみにその材質は、、、チェーン本体、リベットともに 「鋼」 で、必要な強度を持たせるために 「焼き入れ・焼き戻し」 を施してある。



そしてそれぞれの端っこには、ちょっと形状の違った 「フック」 が付いているのだ。




さてさて、、アンティークウォッチ修復の現場では、しばしばこの 「フック」 や 「コマ」 がダメになっているものに出くわすのだが、、、、その場合、「フックを一つ」 もしくは 「コマを一つ下さい」 などと材料屋に電話すると、翌日には店に送られてくる、なんて訳はなく、、、全て自力で作るしかないのだ。



もっともアンティークウォッチのパーツに関しては大半に同じことが言えるのだが、、、正直、コイツはその中でも特に 「面倒臭い」 仕事。



何年やっていても、、、いや、何年もやっているから余計なのかもしれないが、溜息が出る。




コマを例にとると、、、まず最初に、焼きの入っていない 「生の鋼の板」 からコマの形を削り出す。



他のコマと揃った大きさ、厚さ、形にひたすら 「コリコリ、コリコリ」



出来上がったら、繋ぐ相手とちょうどいいサイズの穴を開けるのだが、、、こんなサイズのドリルは市販されていないし、開ける穴のサイズは厳密には毎回違う。



だから多くの場合、その都度ドリルも作ることになるのだ。




無事 「穴開け」 が済んだら、今度は熱処理。



この段階までは、削ったり穴を開けたりし易いように 「生の鋼」 を使っていた訳だが、、このままでは柔らかくて使い物にならない。



ということで、一旦真っ赤にしてから 「焼き入れ」 し、その後、再び一定温度まで熱を加え 「焼き戻し」 する。



焼き入れによってガラスのようにカチカチに硬くなった鋼は簡単に折れたり砕けたりするが、焼き戻しすることによって 「硬いが粘りもある」 ものに生まれ変わるのだ。




ここまで来たら、あとはリベット留めして磨くだけ。



そう 「留めて磨くだけ」 なのだが、、、、これがまた面倒。



何故なら、旋盤で削り出したリベットの平均的なサイズは、、、長さが 「指紋と指紋の間」 くらいのものになるから。

(※ご興味のある方は弊社ホームページフュジーチェーンつなぎ  ご覧下さい。)
http://www.antique-pastime.com/repair/example/1/19.html



「太さ」 じゃないですよ。 「長さ」 なんですから、、。



ちょっとでも短ければリベットできないし、少しでも長いとリ叩いたベットが曲がってまともにかしまらない。



いい加減に見えて、この部分は、かなり大事。



少々長目だけどいいっかー 「エーイ」 などとやると、、、せっかく作ったコマまでひしゃげてパーになり「全部やり直し」 の憂き目に、、。




と、まあ折角いただく仕事に対して 「面倒」 などとは失礼千万、ありがたく修繕させていただかなければいけない、、、とちょっと反省。 



考えてみれば、こんな私の面倒など、、、、チェーンを作った人間の苦労に較べれば、屁でもないのだ。





当時の専門職には 「コマ抜き」 という手動のプレス機があったようだが、、、それにしても、それにしてもである。



チェーンには色々な長さや太さのものがあるが、いずれにしても平均的に130〜140くらいのコマが繋がっているのだ。



この全てに丁寧に穴を開け、熱処理を施し、繋ぎ、研磨を掛け、全てのコマがバラバラに独立してスムーズに動くように仕上げるとなると、、、、「想像を絶する面倒臭さ」 ではないか!




現在もてはやされている 「放電加工」 どころか、「電気」 そのものすら生活の中に取り入れられていなかった時代の職人たちの苦労、そして根気。



「チェーンドライブの時計」 を分解するたび、、、つくづく 「偉いなぁ」 と感心するのだ。


posted by Masa’s Pastime at 18:42 | Comment(0) | 新着情報