2012年06月06日

先週、携帯電話を新しくした。



いや、「新しくなった」 と言うべきか?




去年の夏、海水浴で水没させて取り替えてから1年足らずで、、、また水没。




お恥ずかしい話しだが、、、これで同じ電話の3台目、ということになる。



まあ電話に入っていたデータは生きていたし、新たな電話の購入費用他は溜まっていたポイントで賄えたから結果的には何も問題はないのだが、、、、今回はその原因がちょっと情けない。






先週の休日の夜中、、、港にいた私は、人っ子一人いない桟橋で、エッチラオッチラと釣り道具を運んで歩いていた。



そして、その先端まで来ると、桟橋の真ん中に 「ヨッコラショ」 と、クーラーボックスを置いて一服。



その後、真っ暗な水面に魚の気配がないか、チョロチョロしていたのだが、、、、ふと気が付くと、「ゴロゴロゴロ」 と音がする。



真っ暗な中、目を凝らすと、、、桟橋のほんの僅かな傾斜のせいで、タイヤの付いたクーラーがコロコロと動いていた。



「あっ。 まずい」



そう思い、慌ててクーラーボックスに突進。



まさに、すんでのところで取り押さえ、事なきを得たのだ。




ここまでは良かった。



クーラーボックスには、前の週に市場で買ったイカやイイダコ、それからその前の週に釣り上げたカツオの切り身などの 「釣り餌」 の他、翌日の 「自分の餌」 や飲み物などが入っていて、、、海にぶちまけてしまう訳にはいかない。



ホッとした私はクーラーを桟橋の真ん中に戻し、傾斜に対してタイヤが横を向くように置き直したのだったが、、、。




その時、ちょっとだけよろけたのだ。



その桟橋は、隙間なく板を貼ってあるタイプのものだが、、、、クーラーを置いて起き上がった際、ほんの僅かな板と板の段差に踵が引っ掛かったような感じだった。



「おっとっと」



反射的にもう一方の足を後ろに付いたところ、、、そこにはロープが転がっていた。



踏ん張ろうとした足がロープに乗って更にバランスを崩した私の意識には、しかしまだ余裕があった。




いや、、余裕がある 「筈」 だったのだ。



頭の中では 「まだ何と言うことはない」 と思い、簡単にバランスを立て直すつもりだったのに、、、。



実際には、そのまま2、3歩よろけた私の身体は桟橋の端で斜めに傾き、、、スローモーションのように真っ暗な海に落ちたのだ。




「ドッボーン!」



静まり返った港に響き渡った自分の落水音は、やけに派手だった。



誰もいないのに、恥ずかしくて 「見られてはいけない!」 



そう思った私は、咄嗟に桟橋に飛び付き、、、「3秒ルール」 よろしく何事も無かったように振舞おうとしたのだが、、、、「アレッ?!」



上がれない。



羽織っていたウインドブレーカーのフードに溜まった水、一杯に水を吸った大型のウエストポーチが邪魔しているとは言え、、、「あり得ない」 重量感。



「ザザー」 という水の滴り落ちる音を聞きながら、桟橋の上に肘まで上がっているのに、、、、そこから上に身体が上がらないのだ。




何度か続けて失敗した私は、、、愕然とした。



こんなに身体が重くなっているとは、、。



ダイビング屋だった20代の頃は、、、20キロからの装備を身に付けたまま、水面から船に飛び上がっていたのに。




パンパンになった二の腕を休めるため、しばらくは水面で浮いていた。



さて、どうするか。



最悪の場合、朝になって誰か来るまで泳ぎ続けていればいいのだし、水温は充分に高いから、、、命の危険はない。



しかし、あまりに情けない。



係留してある船の縁はあまりに高く、、、これは無理。



しばし考えながら泳ぎ回り、、、、結局は桟橋の反対側のクリートに繋がったロープにしがみついて、何とかよじ登ったが、、。




ずぶ濡れになった服を脱ぎ、絞っていて気が付いた。



「あっ、携帯電話!」



ウエストポーチに入れていた携帯電話は 「防水仕様」 だが、、、こんなにどっぷり水に浸かってしまっては無理だろう。



慌ててポーチから取り出し、蓋を起こしてみると、、、、画面の明るさが普段の半分くらいになった上、縦にたくさんの線が入っている。



すぐに電池を抜き、タオルであちこち拭いてみたが、、、直に電源も入らなくなった。




でも、、、実際、携帯電話は、どうでも良かったのだ。



こうしてすぐに新しいものが手に入るし。



どうでも良くないのは、、、自分の身体。



頭の中は昔のままでも、、、現実にはそうでないのだ。



これが悔しかった。




翌日釣りを終えて帰宅した私は、家族の笑いの種になりながらも、、、、長いこと埃を被っていた 「健康ぶら下がり器」 で、さっそく懸垂を始めたのだ。 



posted by Masa’s Pastime at 15:58 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月03日

土砂降りの中、ガタガタ震えながら信号待ちをしていた私たちは、「プア−ン」 というバスのクラクションを聞いた。




反射的に振り向くと、少し後方に止まっているバスのようで、、、よく見ると、ガラス越しに運転手のオジサンが手招きをしている。




どうしていいか分からずに固まっていた私と 「I」 



すると、なんとオジサンはバスから飛び出してきたのだ。





「早く乗りな!」




彼はそう言って、大急ぎで私たちの自転車をバスに積み込み、、、促された私たちもずぶ濡れのまま座席に。




車内はガランとしていたが何人かの乗客はいて、、、、私と 「I」 はかわるがわる 「寒いだろ?」 とか 「どうしたの?」 とか聞かれた。




その後、停留所ごとにバスは一人また一人と乗客を降ろしてゆき、、、やがて乗客(私たちはお金を持っていなかったが、、)は私たちだけになった。




そこからの記憶は何故か一部途切れているのだが、、、どうやらそれは終バスで、運転手のオジサンは営業を終えるまでの間、そういう形で私達を保護してくれたようだ。




気がつけば、私と 「I」 は、素っ裸の身体に毛布を被り、真っ赤に燃える暖炉の前に座っていた。



「青梅警察」 の部屋は快適だった。



暖炉はバチバチと音をたてて燃え、毛布も肌触りがいい。



ずぶ濡れでガタガタ震えていたさっきまでとは、天と地の違い。



それに、怖いと思っていたおまわりさん達も皆優しかったのだ。




おまわりさんが作ってくれた雑炊をパクついていると、、、「I」 の両親が部屋に入って来た。



私のオフクロを乗せて、自家用車で飛んできたようだった。



私は怒られるのを覚悟して、心の中で身構えた。



「I」 は 「たっちゃん池」 の帰りからずっとそのことを怖れていたし、そもそもこうなったのは私のせいだから、、、当然、私も彼の両親にこっぴどく怒られると思っていたのだ。




ところが実際には、全然違った。



彼の両親も私のオフクロも、、、、何故かひどく嬉しそうにしていて、ちっとも怒らないのだ。



みんなペコペコとおまわりさんに頭を下げお礼を言っているが、、、おまわりさんの方だってニコニコしているではないか。



一方、怒られなくて済んだ筈の 「I」 は、何故か毛布に包まったまま泣いている。




訳が分らなかった。



「なんでだろ?」



拍子抜けした私は答えをみつけ出せないまま、、、、ただ雑炊の旨さを噛みしめていた。





(完)


posted by Masa’s Pastime at 14:09 | Comment(0) | 新着情報

2012年06月01日

それから、一体何時間自転車を漕いだろうか?




細かったクネクネ道からいつしか大きな車道に入り込んだ私達は、すぐ脇を車がビュンビュンと追い越す側道を走っていた。




大通りに入った頃から降り始めた雨は段々と勢いを増し、、、そのうちザーザー降りに。




完全な濡れネズミになった私達は全く口もきかず、、ひたすら前に向かってペダルを漕ぎ続けていたのだ。





今もはっきり憶えているのは、読み方の分からない「青梅」という標識、、、側溝にはさまっていた猫の死骸、、、車が追い越す度に頭から被る水飛沫、、、、そして振り返った時に見た 「I」 の顔。




身体が大きくて力が強く、少年野球のチームでも不動の四番で、、、いつもは威張りん坊だった 「I」。




その 「I」 の泣き出しそうな顔を見て、、、初めて私は事態を深刻に受け止めたのではなかったか、。




「どうやら自分のせいで、えらいことになった。  こりゃ、うちには帰れないな」 と。





きっと 「I」 の両親は、カンカンになって怒っているのだろう。




オジサンの車に乗せられた 「Y」 は、ちゃんと家に帰れたのか?




オフクロはどうしてるかな?




次から次へと、心配のタネが浮かんで来る。




私はもはや、どこかに向かって走っているのではなく、、、止まって現実を直視する事が出来なくなっていたのだと思う。





そのうち、私達に水を跳ね上げる車の数が少なくなった。




「I」 も私も時計など持っていなかったが、、、明らかに夜は更けていた。




寒い、、。




季節は確か秋頃だったが、、長いことずぶ濡れだったせいで、寒くて堪らなかった。




赤信号で並んで止まると、、、、 「I」 もガタガタと震えていていた。




(続く)


posted by Masa’s Pastime at 14:53 | Comment(0) | 新着情報