Masa’s Pastime

2012年06月03日

「迷子」 その5

土砂降りの中、ガタガタ震えながら信号待ちをしていた私たちは、「プア−ン」 というバスのクラクションを聞いた。




反射的に振り向くと、少し後方に止まっているバスのようで、、、よく見ると、ガラス越しに運転手のオジサンが手招きをしている。




どうしていいか分からずに固まっていた私と 「I」 



すると、なんとオジサンはバスから飛び出してきたのだ。





「早く乗りな!」




彼はそう言って、大急ぎで私たちの自転車をバスに積み込み、、、促された私たちもずぶ濡れのまま座席に。




車内はガランとしていたが何人かの乗客はいて、、、、私と 「I」 はかわるがわる 「寒いだろ?」 とか 「どうしたの?」 とか聞かれた。




その後、停留所ごとにバスは一人また一人と乗客を降ろしてゆき、、、やがて乗客(私たちはお金を持っていなかったが、、)は私たちだけになった。




そこからの記憶は何故か一部途切れているのだが、、、どうやらそれは終バスで、運転手のオジサンは営業を終えるまでの間、そういう形で私達を保護してくれたようだ。




気がつけば、私と 「I」 は、素っ裸の身体に毛布を被り、真っ赤に燃える暖炉の前に座っていた。



「青梅警察」 の部屋は快適だった。



暖炉はバチバチと音をたてて燃え、毛布も肌触りがいい。



ずぶ濡れでガタガタ震えていたさっきまでとは、天と地の違い。



それに、怖いと思っていたおまわりさん達も皆優しかったのだ。




おまわりさんが作ってくれた雑炊をパクついていると、、、「I」 の両親が部屋に入って来た。



私のオフクロを乗せて、自家用車で飛んできたようだった。



私は怒られるのを覚悟して、心の中で身構えた。



「I」 は 「たっちゃん池」 の帰りからずっとそのことを怖れていたし、そもそもこうなったのは私のせいだから、、、当然、私も彼の両親にこっぴどく怒られると思っていたのだ。




ところが実際には、全然違った。



彼の両親も私のオフクロも、、、、何故かひどく嬉しそうにしていて、ちっとも怒らないのだ。



みんなペコペコとおまわりさんに頭を下げお礼を言っているが、、、おまわりさんの方だってニコニコしているではないか。



一方、怒られなくて済んだ筈の 「I」 は、何故か毛布に包まったまま泣いている。




訳が分らなかった。



「なんでだろ?」



拍子抜けした私は答えをみつけ出せないまま、、、、ただ雑炊の旨さを噛みしめていた。





(完)


posted by Masa’s Pastime at 14:09 | Comment(0) | 新着情報
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