Masa’s Pastime

2012年06月01日

「迷子」 その4

それから、一体何時間自転車を漕いだろうか?




細かったクネクネ道からいつしか大きな車道に入り込んだ私達は、すぐ脇を車がビュンビュンと追い越す側道を走っていた。




大通りに入った頃から降り始めた雨は段々と勢いを増し、、、そのうちザーザー降りに。




完全な濡れネズミになった私達は全く口もきかず、、ひたすら前に向かってペダルを漕ぎ続けていたのだ。





今もはっきり憶えているのは、読み方の分からない「青梅」という標識、、、側溝にはさまっていた猫の死骸、、、車が追い越す度に頭から被る水飛沫、、、、そして振り返った時に見た 「I」 の顔。




身体が大きくて力が強く、少年野球のチームでも不動の四番で、、、いつもは威張りん坊だった 「I」。




その 「I」 の泣き出しそうな顔を見て、、、初めて私は事態を深刻に受け止めたのではなかったか、。




「どうやら自分のせいで、えらいことになった。  こりゃ、うちには帰れないな」 と。





きっと 「I」 の両親は、カンカンになって怒っているのだろう。




オジサンの車に乗せられた 「Y」 は、ちゃんと家に帰れたのか?




オフクロはどうしてるかな?




次から次へと、心配のタネが浮かんで来る。




私はもはや、どこかに向かって走っているのではなく、、、止まって現実を直視する事が出来なくなっていたのだと思う。





そのうち、私達に水を跳ね上げる車の数が少なくなった。




「I」 も私も時計など持っていなかったが、、、明らかに夜は更けていた。




寒い、、。




季節は確か秋頃だったが、、長いことずぶ濡れだったせいで、寒くて堪らなかった。




赤信号で並んで止まると、、、、 「I」 もガタガタと震えていていた。




(続く)


posted by Masa’s Pastime at 14:53 | Comment(0) | 新着情報
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