どのくらい時間が経ったか、、、10分くらいだったのか、1時間だったのか、、?
やっとのことで、真っ暗闇の遠くに光が見えた。
急いで明るい方に向かい、、、やっと森の外に出た私達3人。
道らしい道に出て、「I」 も 「Y」 も、少し安心したようだったが、、、私の心境は複雑だった。
そこはポツンポツンと街灯の灯った道で、確かに森の中より遥かにマシだったのだが、、、、私には全然記憶の無い道だったのだ。
でも、2人にはそうは言えない、、。
時間が気になる。
きっともう時間も遅いだろうし、、、とにかく少しでも早く知っている道に出たい一心だった。
「こっちだよ」
結局私はそのまま知っている振りを続け、自転車を押して歩き続けた。
大分歩いたが、、、いつまでたっても、「知っている道」 は出てこなかった。
今になって思えば、それは貯水池に沿って走っている細い道路で、私の向かっていたのは自分達の家と正反対だったから、、、、知っている道など出てきようがなかったのだ。
更に歩き続けると、、、困ったことに 「Y」 がグズリ始めた。
「もう歩きたくない」 とベソをかいている。
「こんな遅くなったらオヤジに怒られるよー。 早く帰りてェよー」
「I」 も怯えている。
道端に座り込んでしまった 「Y」 の傍に寄り、3人ともしばらく途方に暮れていると、、、やがて1台の車が通り掛かった。
その車は、急にスピードを落としたと思ったら路肩の私達の横にノロノロと近付いてやがて止まり、、、ドアを開けて一人のオジサンが出てきたのだ。
「オイ、こんな遅くに大丈夫か?」 とオジサン。
「僕達は大丈夫だけど、でもこの子がもう歩けないって言うんです」 おそらく私はそんな風に答えたのだろう。
すると 「Y」 を見たオジサンは、ビックリしたように言った。
「あれっ!? 君はAさんの息子さんじゃないか?」
「Y」 の父親は警察官だったのだが、、、偶然にもそのオジサンは、何らかの知り合いだと言う。
しかし、「Y」 はオジサンを知らないようだ、、。
彼は、私達がどこに向かっているのか?、なんでこんな時間にこんなところを歩いているのか?を私に聞くと、何とか私達の自転車を車に積めないかやってみたりしていたが、、、それが無理だと分ると、結局 「Y」 だけを車に乗せて、家まで送って行くことにしたのだった。
幼心に不安はあった。
変な人じゃないだろうか?
「Y」 が誘拐されるんじゃないか?
しかし、オジサンの言う 「Aさん」 は本当に 「Y」 の父親の名前だったし、見た感じも 「良い人」 そうだったから、、、、最終的に、私は同意したのだ。
「こっちの方に行くんだよー!」
「Y」 を乗せたそのオジサンは、走り出した車から腕を出して進むべき方角を念押ししてくれたが、、、それはさっきまで私が2人を 「先導」 していたのと反対向きだった。
今考えると、、、ここで私の最も悪い面が出た、と言える。
さっきまで 「こっちだ」 と2人に言い続けていた私は、、、結果的に自分の間違いを指摘され、意地になってしまったのだ。
車が見えなくなると、自転車に跨った私は 「I」 に言った。
「自転車ならこっちの方が近いんだ」
こっちに行っても、きっとすぐに知っている道は出てくる。
それに今度は自転車だから早い。
安全よりも自分の体面にこだわった私は無理にそう考え、、、 「間違った道」 に向けて自転車を漕ぎ出してしまった。
どういう訳だか、、、「I」 は黙ってついてきた。
(続く)
やっとのことで、真っ暗闇の遠くに光が見えた。
急いで明るい方に向かい、、、やっと森の外に出た私達3人。
道らしい道に出て、「I」 も 「Y」 も、少し安心したようだったが、、、私の心境は複雑だった。
そこはポツンポツンと街灯の灯った道で、確かに森の中より遥かにマシだったのだが、、、、私には全然記憶の無い道だったのだ。
でも、2人にはそうは言えない、、。
時間が気になる。
きっともう時間も遅いだろうし、、、とにかく少しでも早く知っている道に出たい一心だった。
「こっちだよ」
結局私はそのまま知っている振りを続け、自転車を押して歩き続けた。
大分歩いたが、、、いつまでたっても、「知っている道」 は出てこなかった。
今になって思えば、それは貯水池に沿って走っている細い道路で、私の向かっていたのは自分達の家と正反対だったから、、、、知っている道など出てきようがなかったのだ。
更に歩き続けると、、、困ったことに 「Y」 がグズリ始めた。
「もう歩きたくない」 とベソをかいている。
「こんな遅くなったらオヤジに怒られるよー。 早く帰りてェよー」
「I」 も怯えている。
道端に座り込んでしまった 「Y」 の傍に寄り、3人ともしばらく途方に暮れていると、、、やがて1台の車が通り掛かった。
その車は、急にスピードを落としたと思ったら路肩の私達の横にノロノロと近付いてやがて止まり、、、ドアを開けて一人のオジサンが出てきたのだ。
「オイ、こんな遅くに大丈夫か?」 とオジサン。
「僕達は大丈夫だけど、でもこの子がもう歩けないって言うんです」 おそらく私はそんな風に答えたのだろう。
すると 「Y」 を見たオジサンは、ビックリしたように言った。
「あれっ!? 君はAさんの息子さんじゃないか?」
「Y」 の父親は警察官だったのだが、、、偶然にもそのオジサンは、何らかの知り合いだと言う。
しかし、「Y」 はオジサンを知らないようだ、、。
彼は、私達がどこに向かっているのか?、なんでこんな時間にこんなところを歩いているのか?を私に聞くと、何とか私達の自転車を車に積めないかやってみたりしていたが、、、それが無理だと分ると、結局 「Y」 だけを車に乗せて、家まで送って行くことにしたのだった。
幼心に不安はあった。
変な人じゃないだろうか?
「Y」 が誘拐されるんじゃないか?
しかし、オジサンの言う 「Aさん」 は本当に 「Y」 の父親の名前だったし、見た感じも 「良い人」 そうだったから、、、、最終的に、私は同意したのだ。
「こっちの方に行くんだよー!」
「Y」 を乗せたそのオジサンは、走り出した車から腕を出して進むべき方角を念押ししてくれたが、、、それはさっきまで私が2人を 「先導」 していたのと反対向きだった。
今考えると、、、ここで私の最も悪い面が出た、と言える。
さっきまで 「こっちだ」 と2人に言い続けていた私は、、、結果的に自分の間違いを指摘され、意地になってしまったのだ。
車が見えなくなると、自転車に跨った私は 「I」 に言った。
「自転車ならこっちの方が近いんだ」
こっちに行っても、きっとすぐに知っている道は出てくる。
それに今度は自転車だから早い。
安全よりも自分の体面にこだわった私は無理にそう考え、、、 「間違った道」 に向けて自転車を漕ぎ出してしまった。
どういう訳だか、、、「I」 は黙ってついてきた。
(続く)