「いい店があるから、来年是非連れて行くよ」
仲間の一人からそう言われた去年の今頃、、、私は骨董祭参加のため横浜に集まったアンティーク屋仲間に呼ばれ 「関内のおでん屋」 で飲んでいた。
黒光りする店内。
飴色になったカウンター。
相当な歴史のありそうなその 「おでん屋」 も私の好みだったが、、、皆の話題は、もっぱら前夜の店に対する賞賛で尽きない。
「へー、どんなものが出てくるの?」
興味をそそられて尋ねても、、、「詳しくは来年の楽しみ」
「とにかく和食系の店」 とだけ教えられていたのだが、、、ちょうど一年経った先週の木曜日、ついにその日がやってきたのだ。
夕方5時頃、、、仕事をしているとマナーモードの携帯電話が震えた。
「エッ、まだ吉祥寺? じゃあこっちは先に行ってるから、東戸塚の駅に着いたら電話して」
「東戸塚? 分りました」
そう言えば去年、横浜からは少し離れたところ、と聞いていたが、、。
店を岩田に任せ慌てて井の頭線の電車に飛び乗ったのは5時半頃だったか。
一旦予約していた横浜のビジネスホテルにチェックインし、、、そこからタクシーで約40分。
聞いた店の名前がすんなりとカーナビに入ったところをみると、そもそも普通に営業している店のようだが、、。
それにしても、皆横浜に泊まっているのだし、明日の会場も横浜なのに、、、何故こんなに遠くまで、、?
不思議に思っているうち、7時半頃にそれらしき店に到着。
どう見ても、ごく普通の小料理屋のような構えの小さな店の暖簾をくぐると、、、小上がりを占領している仲間の顔が目に飛び込んで来た。
「おっ、ようやっと来たなー!」
お膳の脇には焼酎のビンが2、3本立ててあり、総勢7人の仲間はみんな結構出来上がっている様子。
「なんだか、、普通の店だなー」
座敷に腰掛けた私は駆け付けのビールをのみながら、、、内心拍子抜けしていた。
周りを見ると、7〜8人掛けのカウンターには常連らしきお客さんが一人だけ。
その他は私達が占領している小上がりのみ、の小さな店だ。
まあいいや。
元より昔の仲間に会うこと自体が目的なのだ。
今は時計屋になったパスタイムも、開店後数年は 「ジャンクヤード」 というアンティーク屋だった。
骨董祭、百貨店催事、露天の蚤の市、、、あちこち出店していた頃。
右も左も分らず古物の世界に飛び込んだ私に何から何まで教えてくれたのは、、、ここに今集まっている仲間、いや先輩達なのだ。
お通しをツマミながら 「お湯割り」 に移り、懐かしい話しに花が咲いた頃、、、運ばれてきた大皿に目を疑った。
色合いも鮮やかなクジラの刺身が、大皿一杯に盛られている。
「それ、うちらはもう食べたから、後は全部任せたよー」
皆、私を見てニヤニヤ。
これが一人前か、、?
しかし腹が減っている上に大好物だから、、、遠慮なく平らげた。
その後、大量の 「生ガキ」 「白子のポン酢(これは普通の量だった)」 をいただき、何杯かのお湯割りでいい調子になった頃、、、今度は山盛りの 「河豚の空揚げ」
幸福感に浸りつつそれをやっつけていると、、、追い討ちを掛けるように大皿の 「刺身の盛り合わせ」 が!
しかもマグロ、タイ、ブリ、イカ、貝類の盛り合わせの刺身は、全てピンピンの上等ではないか!
仲間の一人の奥さんが、悪戯っぽく私に聞いた。
「中島君、いつも釣りたての魚食べてるだろうから珍しくもないだろうけど、、でも美味しいでしょ?!」
美味い。 間違いなく美味いのだ。
しかし、、、この量は、一体どうなっているのだ?
それでも余力のある仲間と一緒に刺身をつつき、、、何切れか残ったマグロとブリ以外は何とか片付けて飲み続けた。
気が付けばいつの間にやら時間は10時を回り、、、宴もたけなわ。
良く喋り、良く飲み、良く食べて皆、大満足。
しかし、そろそろお開きで横浜に戻り、2次会かな? と思ったその時である。
あろうことか、ニコニコ顔の女将がまたまた 「大皿一杯に盛られた牛肉2皿と鍋」 を運んでやってきたのだ!
こうなればもうヤケクソだった。
「来年のお楽しみ」 とはこのことだったのか!
しかし美味い、しゃぶしゃぶも間違いなく美味い。
肉が空になり、全員が天井に腹を向けた頃、、、再び女将がやってきた。
「お雑炊にしますか?うどんにしますか? それともそれぞれの鍋で両方やりましょうか?」
7人の大人が全員太鼓腹になったのは、11時過ぎ。
受け取ったお勘定を見て、再び唖然とした。
「¥43.000」
7人全員で 「¥43.000」 、、つまり一人 「約¥6.000」、、。
これは何かの間違いではないのか!?
何本もの焼酎を空にして、あれだけの料理を食べ尽くしたのだ。
私の到着する前からだから、、その間、約5時間以上。
何かカラクリがあるのか?
しかしこの店の馴染みらしい幹事の 「和物骨董屋」 によると、、これで 「いつも通り」 だという。
店名のご紹介を許可いただけなかったのは非常に残念、。
しかし確かに客が殺到したら、と考えると仕方がないか。
「どうだあの店? 驚いたろう?!」
仲間の一人にそう言われるまでも無く、、、キツネにつままれたような私はフラフラと横浜のホテルに戻ったのだった。
仲間の一人からそう言われた去年の今頃、、、私は骨董祭参加のため横浜に集まったアンティーク屋仲間に呼ばれ 「関内のおでん屋」 で飲んでいた。
黒光りする店内。
飴色になったカウンター。
相当な歴史のありそうなその 「おでん屋」 も私の好みだったが、、、皆の話題は、もっぱら前夜の店に対する賞賛で尽きない。
「へー、どんなものが出てくるの?」
興味をそそられて尋ねても、、、「詳しくは来年の楽しみ」
「とにかく和食系の店」 とだけ教えられていたのだが、、、ちょうど一年経った先週の木曜日、ついにその日がやってきたのだ。
夕方5時頃、、、仕事をしているとマナーモードの携帯電話が震えた。
「エッ、まだ吉祥寺? じゃあこっちは先に行ってるから、東戸塚の駅に着いたら電話して」
「東戸塚? 分りました」
そう言えば去年、横浜からは少し離れたところ、と聞いていたが、、。
店を岩田に任せ慌てて井の頭線の電車に飛び乗ったのは5時半頃だったか。
一旦予約していた横浜のビジネスホテルにチェックインし、、、そこからタクシーで約40分。
聞いた店の名前がすんなりとカーナビに入ったところをみると、そもそも普通に営業している店のようだが、、。
それにしても、皆横浜に泊まっているのだし、明日の会場も横浜なのに、、、何故こんなに遠くまで、、?
不思議に思っているうち、7時半頃にそれらしき店に到着。
どう見ても、ごく普通の小料理屋のような構えの小さな店の暖簾をくぐると、、、小上がりを占領している仲間の顔が目に飛び込んで来た。
「おっ、ようやっと来たなー!」
お膳の脇には焼酎のビンが2、3本立ててあり、総勢7人の仲間はみんな結構出来上がっている様子。
「なんだか、、普通の店だなー」
座敷に腰掛けた私は駆け付けのビールをのみながら、、、内心拍子抜けしていた。
周りを見ると、7〜8人掛けのカウンターには常連らしきお客さんが一人だけ。
その他は私達が占領している小上がりのみ、の小さな店だ。
まあいいや。
元より昔の仲間に会うこと自体が目的なのだ。
今は時計屋になったパスタイムも、開店後数年は 「ジャンクヤード」 というアンティーク屋だった。
骨董祭、百貨店催事、露天の蚤の市、、、あちこち出店していた頃。
右も左も分らず古物の世界に飛び込んだ私に何から何まで教えてくれたのは、、、ここに今集まっている仲間、いや先輩達なのだ。
お通しをツマミながら 「お湯割り」 に移り、懐かしい話しに花が咲いた頃、、、運ばれてきた大皿に目を疑った。
色合いも鮮やかなクジラの刺身が、大皿一杯に盛られている。
「それ、うちらはもう食べたから、後は全部任せたよー」
皆、私を見てニヤニヤ。
これが一人前か、、?
しかし腹が減っている上に大好物だから、、、遠慮なく平らげた。
その後、大量の 「生ガキ」 「白子のポン酢(これは普通の量だった)」 をいただき、何杯かのお湯割りでいい調子になった頃、、、今度は山盛りの 「河豚の空揚げ」
幸福感に浸りつつそれをやっつけていると、、、追い討ちを掛けるように大皿の 「刺身の盛り合わせ」 が!
しかもマグロ、タイ、ブリ、イカ、貝類の盛り合わせの刺身は、全てピンピンの上等ではないか!
仲間の一人の奥さんが、悪戯っぽく私に聞いた。
「中島君、いつも釣りたての魚食べてるだろうから珍しくもないだろうけど、、でも美味しいでしょ?!」
美味い。 間違いなく美味いのだ。
しかし、、、この量は、一体どうなっているのだ?
それでも余力のある仲間と一緒に刺身をつつき、、、何切れか残ったマグロとブリ以外は何とか片付けて飲み続けた。
気が付けばいつの間にやら時間は10時を回り、、、宴もたけなわ。
良く喋り、良く飲み、良く食べて皆、大満足。
しかし、そろそろお開きで横浜に戻り、2次会かな? と思ったその時である。
あろうことか、ニコニコ顔の女将がまたまた 「大皿一杯に盛られた牛肉2皿と鍋」 を運んでやってきたのだ!
こうなればもうヤケクソだった。
「来年のお楽しみ」 とはこのことだったのか!
しかし美味い、しゃぶしゃぶも間違いなく美味い。
肉が空になり、全員が天井に腹を向けた頃、、、再び女将がやってきた。
「お雑炊にしますか?うどんにしますか? それともそれぞれの鍋で両方やりましょうか?」
7人の大人が全員太鼓腹になったのは、11時過ぎ。
受け取ったお勘定を見て、再び唖然とした。
「¥43.000」
7人全員で 「¥43.000」 、、つまり一人 「約¥6.000」、、。
これは何かの間違いではないのか!?
何本もの焼酎を空にして、あれだけの料理を食べ尽くしたのだ。
私の到着する前からだから、、その間、約5時間以上。
何かカラクリがあるのか?
しかしこの店の馴染みらしい幹事の 「和物骨董屋」 によると、、これで 「いつも通り」 だという。
店名のご紹介を許可いただけなかったのは非常に残念、。
しかし確かに客が殺到したら、と考えると仕方がないか。
「どうだあの店? 驚いたろう?!」
仲間の一人にそう言われるまでも無く、、、キツネにつままれたような私はフラフラと横浜のホテルに戻ったのだった。