Masa’s Pastime

2012年08月19日

「喫茶店」 その2

そんなある日、一人でコーヒーを飲んでいた私にママは言った。



「そう言えば、、、H君、そろそろ仲直りしたいな、って言ってたわよ」



聞いた私は、ちょっと驚いた。



私はHの奴に腹を立てていたが、、、こんな状況が長く続くのには、うんざりもしていた。



こっちの方も、内心 「何とかしよう」 と思っていながら、、、「きっかけ」 が思い付かずにいるところだったのだ。




何日か経った日の放課後、仲間の一人が私に言った。



「中島ー。 今日の帰り、Hがプラワン行くってよ」



Hとの諍いが始まってからというもの、周りの連中は耳にした 「情報」 をそんな風に伝えてくれていた。



そしてHも私も、お互いそんな風に聞いては 「プラワン」 で顔を合わせないよう避けていたのだったが、、、その日は違ったのだ。




放課後、テーブル席で 「ホットサンド」 を食べていると、、後ろで 「チリン」 という音。



ドアを開ける音に続いて 「いらっしゃい!」 



ママの明るい声。  



振り返ると、、、足を引きずるような独特の格好で、ノソノソっと入ってくる、「H」 が見えた。




奴は、ちょっと気まずそうに近寄ってきて、私に言った。



「あー、あのさ、、、俺も悪かったな、、」  



この時私は、、、ママの強い視線を感じた。



「うん、俺もスマン。 お互い、バカみたいだったな」



長いこと続いたバカらしいいがみ合いは、、、、そんな風にして、呆気なく片付いたのだ。




夕方のプラワンには、一人、また一人といつもの連中が集まりだした。



一緒のテーブルでコーヒーを飲んでいる私達を見て、、、連中は皆、拍子抜け。



エプロン姿のママは 「何も無かった」 ような顔をして、、、せっせと連中のコーヒーを煎れていた。




「からくり」 があったのを知ったのは、、、卒業間近のある日のこと。



自宅前の砂利道でバイクを磨きながら、、、Hが私に言ったのだ。



「けどさー、あん時、お前が仲直りしたいって言ってる、ってママから聞いて、ホッとしたよー」



「えっ、ちょっと待った!? 俺は、お前がそう言ってるって聞いたんだぜ!」



「エー????」



「マジで、、!?」




「ハナタレ小僧」 だった私達に 「大人の知恵」 を教えたのは、、、学校ではなく 「喫茶店」 だったのだ。





(終わり)


posted by Masa’s Pastime at 13:04 | Comment(0) | 新着情報
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