今月の初めにはなんとか、と言っていた 「カスタムウォッチ」 の完成が、遅れている。
前回お話ししたとおり、ケースや文字盤の製作自体は全てクリアーした。
しかし、ケースの表・裏に装着される 「サファイアクリスタル」 の調達に予想以上の時間が掛かり、、、当面必要な分の納品が、来月に入ってからになったのだ。
この 「サファイアクリスタル」 、現行腕時計ファンにとってはお馴染みのものだが、、、そうでない方のために、ちょっと説明を。
サファイアクリスタルとは、無色透明の 「人造サファイア」 で作った時計用の風防のこと。
呼び名に 「クリスタル」 と付いても 「水晶」 や 「ガラス」 とは全く無関係なもので、、、実際には、天然のコランダム(ルビー・サファイア)と同じ組成の石の塊を人工的に造り、それを切削して風防の形にしたもの、ということになる。
要は風防自体が 「人造サファイアの塊」 という訳だ。
20世紀に入り、ルビーやサファイアが人工的に作れるようになると、それまで天然石が使われていた時計の 「軸受け」 等の石は、人工的に作られるようになった。
時計の仕様書や文字盤上の表記で 「17石」 とか 「21石」 と呼ばれる、その石の話しだが、、、この人造石が時計の 「風防」 に使われるようになったのは、ごく近年になってからだ。
だから 「アンティーク」 や 「ビンテージ」 の時計の風防で 「サファイアクリスタル」 というのはない訳で、、、これらは通常、ごく普通の 「ミネラルガラス」 や 「プラスティック」 の風防が使用されている。
(※ごく一部の婦人物の時計などで、「天然のホワイトサファイア」 の風防が付いているものはあるようだが、私は確認したことがない。)
この 「サファイアクリスタル」 、その最も大きな利点は、「硬い」 という点。
ちなみに 「ルビー・サファイア」 は基本的に同じ組成を持ったコランダムと呼ばれる石で、鳩の血の色のような赤い物をルビーと呼び、それ以外の全ての色のものを 「サファイア」 と呼んでいるのだが、、、これらはダイアモンドの次に高い硬度を持った石だ。
したがって、当然ガラスやプラスティックと較べて、遥かに傷が付きにくいし、割れにくい。
あちこちにぶつけてしまいがちな腕時計の風防としては、まさにうってつけの材料なのだ。
更に透明度の高さもメリットになる。
一方、デメリットは、ずばり 「コスト」
この手の人造サファイアは、価格が億単位とも言われるプラチナ製の釜の中で酸化アルミニウムを溶解し、結晶化した種を少しづつ大きく成長させるようにして作られる。
「洋梨」 を縦長にしたような形で出来上がった 「サファイアの塊」 は、その後、ある一定の決まった方向から規則正しく輪切りにされる。
そして、時計の風防を作り出すには、この切断されたサファイアから必要な形を 「削り出す」 しかないのだが、ダイアモンドの次に硬い石だから、、、当然その研磨には高度な技術が必要だ。
結果、一つのサファイアクリスタルを作るのに要する費用は、ミネラルガラスやプラスティックとは 「桁違い」 なものになる訳だ。
実は、今回のカスタムウォッチの構想段階において、このサファイアクリスタルのコストは、最も頭の痛い問題だった。
「既製品の時計用サファイアクリスタルが使用できない」 という点においては、従来の 「0サイズカスタム腕時計」 に関しても同様なのだが、、、、0サイズに較べて遥かに大きなサファイアが必要な今回のものの場合、概算の見積りを見ただけで、思わず 「ヒエーッ」 と叫びたくなるほどの値段だったのだ。
正直、しばらくは 「安い所」 を探してみた。
サファイアクリスタルは中国を始めとする新興国でも製造されていて、値段的には大分安い。
しかし、よくよく調べるにつれて、、、これは選択肢から消えた。
この数年、国内で製造される人造サファイアの大半は、ご存知 「LED」 の電球に使用されるようになっている。
困ったことに、これが風防用材料の調達に遅れが出ている原因なのだが、、、例えば中国製に関しては、「クリスマスツリーのチカチカの電飾等なら問題ない」 ものの、より信頼性の必要な 「信号機」 などでは、残念ながら、まだ使用出来ないレベルのものだということが分ったのだ。
実際、現行時計を扱っている知り合いの話しでは、現在市販されているスイス製のブランド時計に関しても、簡単には割れない筈のサファイアクリスタルが、いとも簡単に割れてしまうケースがあるらしい。
つまり、同じサファイアクリスタルでも、、、「ピンからキリまで」 あるということ。
これは困る。
安い市販品の腕時計など巷に溢れ返っている中で、わざわざ 「こだわりの時計」 を作ろうというのに、、、「安かろう悪かろう」 では本末転倒なのだ。
勿論、腕時計の風防はサファイアでないといけない訳ではない。
ミネラルガラスでも、パッキン付きの仕様にして 「防水型」 にすることは出来るし、、、アンティークの時計と同じように、傷が付いたら交換すれば問題はないのだ。
結局、サファイアクリスタルを採用するメリットと、相当分のコスト高となるデメリットを天秤に掛けることになったが、、、最終的に値段の面には目をつむり、信用のおける筋の紹介を受けた、国内の業者に任せることにした。
寸法やカーブの形状、面取りの角度等、、、何度かの細かい打ち合わせを経て、昨日受け取った 「試作品」 のサファイアクリスタル。
防水パッキンを取り付けて、同じく試作品のケースにはめてみたところ、、、まさに 「ドンピシャ」 だった。
これなら仕上がりには、文句なし。
後はひたすら、、、来月の納品を待つのみ、なのだ。
前回お話ししたとおり、ケースや文字盤の製作自体は全てクリアーした。
しかし、ケースの表・裏に装着される 「サファイアクリスタル」 の調達に予想以上の時間が掛かり、、、当面必要な分の納品が、来月に入ってからになったのだ。
この 「サファイアクリスタル」 、現行腕時計ファンにとってはお馴染みのものだが、、、そうでない方のために、ちょっと説明を。
サファイアクリスタルとは、無色透明の 「人造サファイア」 で作った時計用の風防のこと。
呼び名に 「クリスタル」 と付いても 「水晶」 や 「ガラス」 とは全く無関係なもので、、、実際には、天然のコランダム(ルビー・サファイア)と同じ組成の石の塊を人工的に造り、それを切削して風防の形にしたもの、ということになる。
要は風防自体が 「人造サファイアの塊」 という訳だ。
20世紀に入り、ルビーやサファイアが人工的に作れるようになると、それまで天然石が使われていた時計の 「軸受け」 等の石は、人工的に作られるようになった。
時計の仕様書や文字盤上の表記で 「17石」 とか 「21石」 と呼ばれる、その石の話しだが、、、この人造石が時計の 「風防」 に使われるようになったのは、ごく近年になってからだ。
だから 「アンティーク」 や 「ビンテージ」 の時計の風防で 「サファイアクリスタル」 というのはない訳で、、、これらは通常、ごく普通の 「ミネラルガラス」 や 「プラスティック」 の風防が使用されている。
(※ごく一部の婦人物の時計などで、「天然のホワイトサファイア」 の風防が付いているものはあるようだが、私は確認したことがない。)
この 「サファイアクリスタル」 、その最も大きな利点は、「硬い」 という点。
ちなみに 「ルビー・サファイア」 は基本的に同じ組成を持ったコランダムと呼ばれる石で、鳩の血の色のような赤い物をルビーと呼び、それ以外の全ての色のものを 「サファイア」 と呼んでいるのだが、、、これらはダイアモンドの次に高い硬度を持った石だ。
したがって、当然ガラスやプラスティックと較べて、遥かに傷が付きにくいし、割れにくい。
あちこちにぶつけてしまいがちな腕時計の風防としては、まさにうってつけの材料なのだ。
更に透明度の高さもメリットになる。
一方、デメリットは、ずばり 「コスト」
この手の人造サファイアは、価格が億単位とも言われるプラチナ製の釜の中で酸化アルミニウムを溶解し、結晶化した種を少しづつ大きく成長させるようにして作られる。
「洋梨」 を縦長にしたような形で出来上がった 「サファイアの塊」 は、その後、ある一定の決まった方向から規則正しく輪切りにされる。
そして、時計の風防を作り出すには、この切断されたサファイアから必要な形を 「削り出す」 しかないのだが、ダイアモンドの次に硬い石だから、、、当然その研磨には高度な技術が必要だ。
結果、一つのサファイアクリスタルを作るのに要する費用は、ミネラルガラスやプラスティックとは 「桁違い」 なものになる訳だ。
実は、今回のカスタムウォッチの構想段階において、このサファイアクリスタルのコストは、最も頭の痛い問題だった。
「既製品の時計用サファイアクリスタルが使用できない」 という点においては、従来の 「0サイズカスタム腕時計」 に関しても同様なのだが、、、、0サイズに較べて遥かに大きなサファイアが必要な今回のものの場合、概算の見積りを見ただけで、思わず 「ヒエーッ」 と叫びたくなるほどの値段だったのだ。
正直、しばらくは 「安い所」 を探してみた。
サファイアクリスタルは中国を始めとする新興国でも製造されていて、値段的には大分安い。
しかし、よくよく調べるにつれて、、、これは選択肢から消えた。
この数年、国内で製造される人造サファイアの大半は、ご存知 「LED」 の電球に使用されるようになっている。
困ったことに、これが風防用材料の調達に遅れが出ている原因なのだが、、、例えば中国製に関しては、「クリスマスツリーのチカチカの電飾等なら問題ない」 ものの、より信頼性の必要な 「信号機」 などでは、残念ながら、まだ使用出来ないレベルのものだということが分ったのだ。
実際、現行時計を扱っている知り合いの話しでは、現在市販されているスイス製のブランド時計に関しても、簡単には割れない筈のサファイアクリスタルが、いとも簡単に割れてしまうケースがあるらしい。
つまり、同じサファイアクリスタルでも、、、「ピンからキリまで」 あるということ。
これは困る。
安い市販品の腕時計など巷に溢れ返っている中で、わざわざ 「こだわりの時計」 を作ろうというのに、、、「安かろう悪かろう」 では本末転倒なのだ。
勿論、腕時計の風防はサファイアでないといけない訳ではない。
ミネラルガラスでも、パッキン付きの仕様にして 「防水型」 にすることは出来るし、、、アンティークの時計と同じように、傷が付いたら交換すれば問題はないのだ。
結局、サファイアクリスタルを採用するメリットと、相当分のコスト高となるデメリットを天秤に掛けることになったが、、、最終的に値段の面には目をつむり、信用のおける筋の紹介を受けた、国内の業者に任せることにした。
寸法やカーブの形状、面取りの角度等、、、何度かの細かい打ち合わせを経て、昨日受け取った 「試作品」 のサファイアクリスタル。
防水パッキンを取り付けて、同じく試作品のケースにはめてみたところ、、、まさに 「ドンピシャ」 だった。
これなら仕上がりには、文句なし。
後はひたすら、、、来月の納品を待つのみ、なのだ。