あれよあれよと言うまに7月に入り、夏になった。
しかし、、、ビールの旨い季節は、まだ来ていない。
例年なら既に、日中はムンムン、ムシムシムシムシムンムン。
それが夜になってもなかなか引かない時期。
キリのない仕事にカタをつけ、背中にへばり着いたシャツを引き剥がしつつ帰路に着けば、、、目につくのは 「生ビール450円!!」 の居酒屋の看板。
一瞬通り過ぎるもすぐに踵を返し、、、夢遊病者のように、フラフラと店内へ。
テーブルに着いたらまずは 「大生!」
で 「ゴキュゴキュゴキュゴキュ、、、プァーッ」
と、これが例年の夏のパターン。
だが、、、この梅雨は、何故か夜になると涼しいのだ。
まあ、それはいいとしよう。
いずれ暑くなるのは、時間の問題だから。
しかしそれとは別に、このところ気になって仕方ないことがある。
居酒屋にしろパブにしろ、、、そういった類いの店に、「涼し過ぎる店」 が多いのだ。
旨いビールで暑さを癒すつもりで飛び込めば、入った瞬間 「おっと、、」
クーラーガンガンで、店内は冷んやり、、。
大ジョッキが空になる頃には汗ばんでいた身体はすっかり冷えていて、、、二杯目のビールを飲む気が失せるどころか、熱燗を頼もうか、と思うほど、、。
これが、私には分からない。
わざわざ余計な電気代を掛けた上にお客のやる気を削ぎ(冷えたビールが飲みたい、という)、、、結果、売り上げを減少させる。
それだけではなく、、、「あの店は冷えすぎてるからなー、、」 と、なり、どんなに立地が良くても、どんなにつまみが旨くても、、、次回からはその店を避けるようになるのだ。
店の厨房が暑いのは分かるし、生ものを扱っている店などは品物の傷みにも気を遣うのだろうが、、、それにしても、上着を着なければ居られないほど店内をキンキンに冷やして、一体何のメリットがあると言うのだろうか?!
この話しを、ハモニカ横丁の飲み屋で常連達に話した。
ちなみにその店は汗をかくほど暑くはないが、、、目の前に厨房があることもあって、スーとするほどエアコンは効いていない。
30代女性の常連氏曰く 「私、そういう店には二度と行かない! 体調崩しちゃうし。」
同じく30代の男性客は 「ホント、イヤンなっちゃうんだよなー。 これでもか、ってほどエアコン効いてると。 ビールなんか飲む気なくなるし。」
2人の意見を聞いた私は 「フムフム。 そうだろう、そうだろう。」
しかし、しばらく黙って聞いていた顔馴染みの男性客は 「ちょっと待った。 マサさん、、、デブの意見も聞いて下さいよ!」
確かに彼はかなり体格が良いのだが、、、ふと見ると、同じカウンターに腰掛けていながら、額に珠のような汗を浮かべている。
「俺なんか、言っちゃあ悪いけどここでも暑くてしょうがないほどだし、、、初めて入った店がムンムンしてたら、一杯飲んで即効帰りますよ!」
「ガチャーン」
ちょうどそこに、「いつもの顔」 の40代の夫婦が入ってきて、、、カウンターは一杯になった。
「あっ、どうもどうも、まいど。 イヤー、暑いですねー。 うちもカミさんも暑いのが苦手で、、、もう夏は堪らんはホンマ。 ここは厨房があるから余計やね、、。 あー、暑い暑い、、。」
関西弁でまくしたてながら、しきりにハンカチで汗を拭っている。
結局、討論会は、、、「引き分け」 になったようだ。
そう言えば、、、今は亡き、時計仲間の 「シカゴのボブさん」 を想い出した。
いつだったか、フロリダ州 「デイトナビーチ」 のホテルで同室に泊まったことがあった。
日中はかなりの気温になる街だが、陽が沈むと、急に気温が下がる。
その晩、私が 「長袖のTシャツ」 を着てベッドの掛け布団にくるまって寝ていると、、、隣のベッドから、 「マサ、クーラー付けていいかな? 暑くて眠れそうもないんだ。」 と、済まなそうな、ボブさんの声。
「パチ。 ドン、シュー」
しばらくすると、、、部屋はクーラーの冷気で、キンキンに冷えてきた。
隣を見ると、、「パンツ一丁」 のボブさんは、ベッドの上で寝息をたてている。
その晩、寒さに震える私は、、、「体感温度の違い」 というものを、ヒシヒシと感じたのだった。