「現状、蓋の閉まらない直接の原因は、この風防にあります。」
私は縁ごと取り外してあるガラスの風防を、その方に見せた。
「つまり、この風防の高さが高過ぎて蓋の裏側に干渉しているため、蓋を閉めても押し上げられてしまうわけですね。」
風防を取り外してあるその時計を渡し、蓋の閉まり具合を試してもらう。
ガラスが無ければ蓋がきちんと閉まることがわかり、その方はちょっとホっとしたようだ。
「長年の使用によって蓋のヘリが摩耗しているのは確かですが、それだけで蓋が開いてしまう、という程のレベルではありません。」
「なるほど、、」
しかしそれなら風防をもっと低いものに交換すればそれで済みそうなもんだが、、、何で機械の方まで修理するのだ?
その方の表情には、そんな風に釈然としない様子が現れていた。
これは無理もない。
普通、誰でもそう思うだろう。
私はできる限り専門用語を使わないよう気を付けながら、、、説明を続けた。
「風防を低くすれば蓋が閉まるのは間違いないのですが、この時計の場合、そうすると低くなったガラスの内側に分針が当たり、時計が止まる、、、つまり蓋は閉まるけど動かない時計、になってしまいます。」
「でも、元々はちゃんとしていた筈なんですよね? 少なくとも新品の頃は、、。」
「そうです。 ガラスは針にも触らず、蓋にも触らず、絶妙な高さにあった。 でも、これを見て下さい」
私は再度、取り外してあるガラスを見せた。
「さっき試していただいた通り、このガラスは背が高すぎてケースに当たっています。 にも関わらず、内側の一部で分針にも触っているのです。 これをもっと低い風防に交換すれば、、、分針は更に強く押さえつけられてしまう。」
僅かだが、、、ガラスの内側には、分針が擦れた 「半円」 の跡が付いている。
「、、、???」
その方は、まだどことなく納得がいかない様子で、、、手に持ったガラスを、しきりに光に透かしていた。
(続く)
私は縁ごと取り外してあるガラスの風防を、その方に見せた。
「つまり、この風防の高さが高過ぎて蓋の裏側に干渉しているため、蓋を閉めても押し上げられてしまうわけですね。」
風防を取り外してあるその時計を渡し、蓋の閉まり具合を試してもらう。
ガラスが無ければ蓋がきちんと閉まることがわかり、その方はちょっとホっとしたようだ。
「長年の使用によって蓋のヘリが摩耗しているのは確かですが、それだけで蓋が開いてしまう、という程のレベルではありません。」
「なるほど、、」
しかしそれなら風防をもっと低いものに交換すればそれで済みそうなもんだが、、、何で機械の方まで修理するのだ?
その方の表情には、そんな風に釈然としない様子が現れていた。
これは無理もない。
普通、誰でもそう思うだろう。
私はできる限り専門用語を使わないよう気を付けながら、、、説明を続けた。
「風防を低くすれば蓋が閉まるのは間違いないのですが、この時計の場合、そうすると低くなったガラスの内側に分針が当たり、時計が止まる、、、つまり蓋は閉まるけど動かない時計、になってしまいます。」
「でも、元々はちゃんとしていた筈なんですよね? 少なくとも新品の頃は、、。」
「そうです。 ガラスは針にも触らず、蓋にも触らず、絶妙な高さにあった。 でも、これを見て下さい」
私は再度、取り外してあるガラスを見せた。
「さっき試していただいた通り、このガラスは背が高すぎてケースに当たっています。 にも関わらず、内側の一部で分針にも触っているのです。 これをもっと低い風防に交換すれば、、、分針は更に強く押さえつけられてしまう。」
僅かだが、、、ガラスの内側には、分針が擦れた 「半円」 の跡が付いている。
「、、、???」
その方は、まだどことなく納得がいかない様子で、、、手に持ったガラスを、しきりに光に透かしていた。
(続く)