Masa’s Pastime

2012年10月05日

「夢・妄想」

気がつくと、私は贅沢な応接室のソファーに腰掛けていた。




革の感触がヒヤッとして気持ちいい。




窓の外は首都圏のビル群。



どうやらどこかの高層ビルの一室にいるようだ。





テーブルを挟んで向こう側には身なりのいい重役風の紳士が腰掛け、秘書と思わしき美人と微笑んでいる。



微笑んでいる先には他に誰もいない。




私だけなのだ。





やたらに旨いコーヒーを啜っていると、、、秘書風が資料のようなものを取り出した。




「失礼ながら御社の製品のサンプルを調べさせていただきました。 全く非の付けようがございません」




「ご苦労様。それで?」




生意気な若造のように振る舞う私に、重役風がソファから腰を浮かせ、話しを持ち出してきた。





「是非御社の製品をうちで扱わせていただきたい!」 本当に必死の形相だが、、、私はにべもなく断った。




「残念だけど、そいつは出来ない相談だね」




どういうわけだか分からないが、私は普段と違いエラく自信満々なのだ。





「どうしてでしょう? 何かお気に障る点でも?」




格好のいい唇を突き出して、秘書風が聞く。




私は彼らに靴底が見えるほど高々と脚を組み、、、更に調子に乗って言った。





「うーん。なんていうのかなぁ、、。 そもそも俺は全て自分でやらなきゃ気が済まないタチなもんでね。人の手を借りるのが嫌いなんだよ。」




「手を借りるなんてとんでもない!私どもはただ御社の素晴らしい製品を世の人々に知っていただくお手伝いをしたいだけでして、、」




重役風は、ガラにもなく揉み手でもしそうな勢いで私の目を下からのぞき込んでいる。




「何とかお願い致します!」




美人秘書風もプライドを捨て、重役風と一緒に媚びを売り始めた。





全く何がなんだか分からない。



しかしどういうわけか、、、私はこの2人に対してエラく 「優位」 に立っている。





そもそも 「御社の製品」 とは何なのか?



それなりの社会的地位がありそうな重役風が、、、何故 「時計屋のオヤジ」 にヘコヘコしているのか?




全く分からないが、、、?、、いや、次第に何となく分かるような気もしてきたような、、。




「そうか、、。」



そういうことなら、好き放題やってやろう。





私は 「ゴルゴ13」 にでもなったつもりでこう言った。




「悪いが、この話しはなかったことにしてもらおう」




「お願いいたします!お願いいたします!そこをなんとか!」




フカフカのカーペットに額を擦り付け始めた2人を置き去りにして、、、私は颯爽と部屋を出る。





「早く起きなさい!」



カミさんの叫び声で目が覚めた。



2人の娘はあさっての方を向いて雑魚寝していて、、、何度言われても、起き出さない。



「もう学校の時間よー!」





私はサッシを開け、パンツ一丁のまま煙草を咥えてベランダに出た。



下に見えるのは、ランドセルを背負って歩いている子供たちの列。



横断歩道で旗を持っている父兄。



いつも通りの朝の団地の風景。




そして自分の吐き出した煙の彼方には、、、ついさっきまで私が居た筈の 「高層ビル群」 が霞んで見えた。


posted by Masa’s Pastime at 13:17 | Comment(0) | 新着情報
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