Masa’s Pastime

2012年07月18日

「夏休み」 その5


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トラブル続きの初日の朝とは反対に、、、その後の旅は至って順調だった。




梅雨明け直後の久米島は、連日、まさにカンカン照り。




宿題や習い事から解放された子ども達は、馬鹿のように大はしゃぎしている。





毎日、朝から晩まで海やプールで泳ぎ、、、早朝や夕暮れ時には、港や浜で、お約束の 「釣り」




その他、 「はての浜」 と呼ばれる沖の浅瀬に船で渡ったり、レンタカーで島中を走り回って、良さげなリーフをみつけてはシュノーケリングしたり。




去年の渡嘉敷島に続き、終日遊びっぱなしの 「南の島」 は実に快適で、、、本当に 「言うことなし」 の夏休みになったのだ。





ただ、そんな素晴らしい島での滞在中、、、一つだけ気にかかったことがあった。




あちこちで、、、、明らかに 「意味のない公共工事」 が行われているのが、やたらに目に付いたのだ。





亜熱帯性の木々が生い茂る山肌が削り取られ、、、露出した赤土。




ダンプカーがセメントを運び込み、新たなコンクリートの道が作られる。




しかしよく見れば、、、、その殆どが、既に充分整備された島の 「周遊道路」 のちょっとしたカーブを直線にしたり、いくらか近道出来るようにする類のもの。



正直、こんなところに道を作って、一体 「一日に何人の人が利用するのか?」 と首を捻るようなものばかりだった。




削り取られた赤土に、雨が降る。



雨水は赤土を流しながら、川に入り、海に注ぎ出る。



そしてこの赤土は、、、やがて珊瑚を死滅させてしまう。



まだまだ美しい珊瑚の残るこの海にも、そういったところが何箇所もあり、、、心が曇った。




帰りの日。



「今、久米島の人口は何人くらいですか?」



空港に向かうタクシーの中で、私より少し年配の運転手に訊いてみる。



「今は8000人ほどです。 でも50年前は18000人以上いたんですよ。」



なるほど、、、この50年で、人口は半分以下になってしまったということか。



人の良さそうなその人は、更にこう続けた。



「若者はみんな沖縄本島や内地に出てしまうからね、、。 でも、残れって言ったって、無理。 何しろここには仕事が無いんですから。」




島の主な産業は、「サトウキビ」 と 「観光」 



その他 「久米仙」 を始めとする、焼酎の製造等。



以前は米作りが盛んで、島中 「水田」 だらけだったそうだが、、、日本政府の施行した 「減反政策」 以後、どこもサトウキビ畑になったようだ。




仕事がないから若者は流出し、、結果、過疎・高齢化が進む。



雇用を増やし、経済活動を活発化させる為の対策が 「公共工事」 、、、そして、それを推す政治家が票を集め、当選する。



当選した政治家は、次期の選挙を睨んでより多くの予算を公共工事に付けようと必死になり、、、その功績は、再び 「票」 となって返ってくる。



ご存知の通り、、、こういう構造はこの島に限らず、日本列島全体に永く巣食っているものだ。




都合のいい時だけ遊びに来る私達 「外部の人間」 は、単純にこう思いがちだ。



「意味のない公共工事など、税金の無駄遣いではないか!」



しかし 「公共工事」 に一定の雇用増大の効果があるとすれば、、、そこに住む人達にとっては、その内容に関わらず 「それ自体」 に意味があり、、、 「意味のない公共工事」 など存在しないとも言える。




現状 「公共工事」 がどうしても必要ならば、、、せめて 「使わない道路」 の建設に当てられる予算を、既に壊してしまった環境の 「復旧や保全」 に付け替えることは出来ないものか。



同じ予算が付き、従来の技術が生かせるのであれば土木や建築の業者にとっても悪いことは無いだろうし、、、珊瑚礁をはじめとする島の環境の保全は、将来の 「観光収益の増加」 にも必ず繋がる筈なのだ。




そんなことを考えているうち、、、小さなプロペラ機は、唸りをあげて飛び立った。



窓の下を覗くと、あちこち 「青のグラデーション」 の絶景だ。  



やがて久米島の姿は遠く離れ、、、雲の向こうに消えていく。



私は、久米島がいつまでも美しい島であって欲しいと願いつつ目を瞑り、、、、楽しかった夏休みの余韻に浸った。






(完)


posted by Masa’s Pastime at 08:50 | Comment(0) | 新着情報
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