先日お話しした通り、明日から10日ほど店を留守にする予定になっている。
2年前に亡くなった 「シカゴのボブさん」 の作業場がその後そのままになっていて、、、私は未亡人になったマーガレットさんに、片付けを頼まれているのだ。
「片付け」 と言っても普通の掃除とは違う。
普通なら残された彼女が掃除してしまうことになるのだろうが、、、地下室にある遺品のうち、何が価値のあるもので何がそうでないかを全く知らない彼女には、整理のしようがないのだ。
元々は、去年の今頃行く予定だった。
それが例の震災で直前にキャンセルせざるを得なくなり、、、一年経った今、ようやっと約束を果たすことになった訳だ。
残念ながら 「晴れ晴れとした気持ちの旅行」 ではない。
何しろボブさんが亡くなってから、まだ2年足らず。
「手付かず」 になっている地下室には、彼の道具が昨日まで使っていたように散らばっているようだし、、、私のために用意してくれた作業台もそのまま残っている。
見憶えのあるその一つ一つの道具や材料を、「これはゴミ、これは使える」 などと仕訳けするのは、、、決して楽しいことではないのだ。
マーガレットさんは 「使えるものは是非使って欲しい」 と言う。
私もそう思う。
しかし、、、何代も前から使っていた 「19世紀のケース製作用旋盤」 や 「チャック」 、それから時計のケースを整形するための 「金型類」 などはどれも鉄の塊だから、、、全て合わせると大変な重量になる。
使えるからと言って、おいそれと運んでこれるものでもないし、、、もしそうすればパスタイムはケース修理用の工具や材料で埋もれてしまうだろう。
やはり一部のものは、、、諦めなければならないかもしれない。
生前、ボブさんはマーガレットさんに言っていたという。
「時計ケース修理専門の職人は、アメリカにもう残っていない。 それにこれを売っぱらって金にすることしか考えていない周りの連中を、俺は信用していない。 俺に万一のことがあったら、道具や材料は全部マサに使ってもらいたい」 と。
やはり、出来るだけのことをしよう。
間違っても、使えるものを 「廃棄」 することのないよう。
最後に仲間と集まった釣り旅行の帰り際。
それぞれの車に乗り込む前に 「I HOPE TO SEE YOU AGAIN」 と言いながら、、、、弱々しく私の手を握ったボブさんの淋しげな顔が甦る。
結局は、それが最後になった。
少々の無理は覚悟の上。
せめて彼の生前の希望を叶えられるよう、、、まだ生きている私は頑張らねば。
そんな思いで明日の昼、懐かしの場所に出掛けてくるつもりだ。
2年前に亡くなった 「シカゴのボブさん」 の作業場がその後そのままになっていて、、、私は未亡人になったマーガレットさんに、片付けを頼まれているのだ。
「片付け」 と言っても普通の掃除とは違う。
普通なら残された彼女が掃除してしまうことになるのだろうが、、、地下室にある遺品のうち、何が価値のあるもので何がそうでないかを全く知らない彼女には、整理のしようがないのだ。
元々は、去年の今頃行く予定だった。
それが例の震災で直前にキャンセルせざるを得なくなり、、、一年経った今、ようやっと約束を果たすことになった訳だ。
残念ながら 「晴れ晴れとした気持ちの旅行」 ではない。
何しろボブさんが亡くなってから、まだ2年足らず。
「手付かず」 になっている地下室には、彼の道具が昨日まで使っていたように散らばっているようだし、、、私のために用意してくれた作業台もそのまま残っている。
見憶えのあるその一つ一つの道具や材料を、「これはゴミ、これは使える」 などと仕訳けするのは、、、決して楽しいことではないのだ。
マーガレットさんは 「使えるものは是非使って欲しい」 と言う。
私もそう思う。
しかし、、、何代も前から使っていた 「19世紀のケース製作用旋盤」 や 「チャック」 、それから時計のケースを整形するための 「金型類」 などはどれも鉄の塊だから、、、全て合わせると大変な重量になる。
使えるからと言って、おいそれと運んでこれるものでもないし、、、もしそうすればパスタイムはケース修理用の工具や材料で埋もれてしまうだろう。
やはり一部のものは、、、諦めなければならないかもしれない。
生前、ボブさんはマーガレットさんに言っていたという。
「時計ケース修理専門の職人は、アメリカにもう残っていない。 それにこれを売っぱらって金にすることしか考えていない周りの連中を、俺は信用していない。 俺に万一のことがあったら、道具や材料は全部マサに使ってもらいたい」 と。
やはり、出来るだけのことをしよう。
間違っても、使えるものを 「廃棄」 することのないよう。
最後に仲間と集まった釣り旅行の帰り際。
それぞれの車に乗り込む前に 「I HOPE TO SEE YOU AGAIN」 と言いながら、、、、弱々しく私の手を握ったボブさんの淋しげな顔が甦る。
結局は、それが最後になった。
少々の無理は覚悟の上。
せめて彼の生前の希望を叶えられるよう、、、まだ生きている私は頑張らねば。
そんな思いで明日の昼、懐かしの場所に出掛けてくるつもりだ。