Masa’s Pastime

2012年03月22日

「赤ん坊と老人」

先週ご紹介した 「新しい腕時計ケース」 の製作に、スタッフの岩田がコンピューター制御の 「NCフライス」 を使っているのはこのブログで触れた通り。




「プログラムの入力」 によって機械を動かすこの方法は、間違いなく近代的でハイテクな技術と言える。




一方、現在エングレイバーの辻本は新たなスタイルのダイアルに挑戦中だが、、、彼が使用している 「ローズエンジン」 は19世紀のアンティークマシン。




こちらの方は思いっきり昔ながらのローテクで、、、この正反対な2つの機械には実に120年以上の年齢差がある。




これほど年代の違う2つの機械が同じ工房で活躍しているのは、、、ピッチャーが赤ん坊で、キャッチャーが爺さんの野球チームのようなもので、ちょっと滑稽だ。





ところで後者の 「ローズエンジン」 は、1880年頃製造されたアメリカ製。




簡単に言うと幾種類もの形状の違ったカムが取り付けられた手動式の旋盤で、、、ジュエリーや時計のケース・文字盤などの金属面に 「ギロシュ」 と呼ばれる様々な模様を彫り込むのに使用されるものだ。




ちなみにこのローズエンジンは、当時ロードアイランド州で製造されていた 「ジュエリーの装飾加工」 に使われていたものとのこと。




それが現役を退いてほぼ一世紀後の一昨年の夏、、、物好きな日本人の注文により大々的な修復を受けることに。




その後陸路でカリフォルニアまで5000キロの旅をし、、、そこからはるばる太平洋を渡って、パスタイムにやってきたのだ。





100年以上もの年月を経た爺さんが 「現役」 でいられる理由は、アンティークウォッチのそれと同じ。




元々そういう前提で作られているものだから。




「ダメになったらそっくり買い換える」 ではなく、、、「ダメになったらその部分だけ」 手直ししたり交換出来るように作られているのだ。




実際に細部の使い勝手はパスタイムで手直ししたし、、、「新たな文字盤」 の製作用に、カムも新調して付け加えた。




大きなハンドルを左手で回しながら、、刃物を右手で押す。




「ゴトゴトゴト」




カムの凸凹をベアリングがなぞり、、、ヘッドが模様なりに横揺れしながら回転する。



描かれるパターンは、カムの形状や刃物の送り幅の選択といった、言わば頭の仕事。




一方で彫りの出来映えは、仕上げた刃物の切れと右手親指の力加減一つに掛かっている。




機械を使っているのに 「誰がやっても同じ」 にならない、、、どころか、全く別のものになる。




職人としては、そこがまた励みになるところ。




店の奥で 「チーチクチク、ギュイーン」 と泣く赤ん坊。



店に入ってすぐのところでは 「ゴトゴトゴト」 とつぶやく爺さん。



新しいカスタムウォッチの構想には、どちらも欠かせない仲間。



けれど 「古いもの好きのオジサン」 は、、、いつもついつい老人を贔屓してしまうのだ。

懐中時計 東京

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posted by Masa’s Pastime at 14:28 | Comment(0) | 新着情報
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